墜愛
駅に着いて、自然とお互いに手を離し、改札を抜ける。
「麗蘭ちゃん、あっちのホームだよね。」
「はい。」
「俺はこっちなんだ。」
「そうなんですね。」
「…家まで、送っていこうか?」
そう尋ねる先輩の手がまた私の手にかかる。
「えっと…大丈夫です。」
そう言うと、先輩の手が離れた。
「そっか。じゃあ次の機会があったら、その時は送らせてもらおうかな。」
「…はい。」
「じゃあ、今日はここで。」
「はい。じゃあ…また。」
「麗蘭ちゃん。」
そう言って先輩は、人目も気にせずに抱きしめてきた。
「ちょ…!先輩!?」
「ごめんごめん。」
そう言って先輩はすぐに離れた。
一瞬の出来事だったけど、私の心臓はバクバク動いて止まらない。
「ごめん、ちょっと印象付けたくてさ。送らせてもらえないなら、これくらいいいかと思って。」
にっこり笑う先輩。
まさに、年上の余裕とはこのことなのだろうか…。
なんだか上手く振り回されているようにも思える。
「じゃ、また学校でね。今日はありがとう。」
先輩はポンポンと私の頭を撫でると、
手を挙げてそのままホームへ続く階段へ向かい、
人ごみの中に、消えていった。