墜愛
確かに。手も握られて、軽く抱きしめられて。
それでも気持ちが傾かない。
なぜか感じる違和感。
なぜ、一歩踏み出せないのか、自分でもよく分からない。
「…麗蘭、ホントは他に好きな人いるんじゃないの?」
「え!?」
「ほら、図星?好きな人いるから、先輩に気持ちが傾かないんでしょ。」
「そんなこと…ない。先輩のこと、まだ好きになれるかもしれないし──」
「ダメだよ、麗蘭。ちゃんと真剣に考えないと。」
歩美にしては珍しく、いつもより強い口調。その表情から、かなり怒っているのが分かる。
「高坂先輩が優しいからって、いつまでも答え出さないなんて、そんなのひどいよ。いつまで先輩に気を持たせる気?ちゃんと自分の気持ちに向き合って、今本当に好きな人とちゃんと向き合ってよ。じゃないと、私の気持ちが救われないじゃない。」
「え?どういう…」