墜愛
人波に流されながら、電車に乗り込む。
電車が動き出してすぐ、メッセージが届いた。
『いまどこ?1人?』
…質問に質問で返された。
だから、用事は何なのよ。
『1人だよ。日比谷から今出たとこ。』
『じゃあ、次で降りて。』
『なんで?』
『着いたら、駅前のコンビニまで来て。』
もう。なんで質問無視するかな。
そう心の中で文句を言いながらも、
綾人からの呼び出しが嬉しくて、テンションが上がる。
次の内幸町駅で降り、地上に出てコンビニまで歩く。
夜のコンビニの照明に照らされた1人の男の人が、
駐車場に停めたバイクの前に立っているのが見えた。
「よお。」
綾人が私に気付いて、手を挙げた。
ジーパンにTシャツ、ライダースジャケットを羽織っている綾人。
…悔しいけど、かっこいい。
「…なによ、急に呼び出して。」
「ちょっと話したいこと、あって。」
「そ。何?」
さっき歩美に怒られて素直になろうと決めていたはずなのに、
いざ本人を目の前にすると、
ちっとも素直になれない。
「とりあえず乗って。」
そう言った綾人が、予備のヘルメットを、私の頭に被せてきた。