墜愛
「違うって…何が?」
ドキドキしながらそう尋ねると。
「…もう、ただの幼馴染なんかじゃないって、思ってるってこと。」
「それって…」
「俺、気持ちはっきり伝えないまま、麗蘭のこと、抱いてた。幸せだったけど、怖かった。このまま、体だけの関係が続いてしまうなんてことになったら、俺はそれこそ幸せになれない。」
「このまま、麗蘭に気持ちを伝えられないまま、大人になってしまったら、あの映画みたいに、麗蘭と違う人生を辿ることになる。それだけは絶対に嫌だ。だから…」
そう言うと、綾人は後ろ手に持っていたものを私の方に差し出してきた。
その手に握られていたのは…赤いバラの花束。
「え…?何?」
まさかの出来事に、私が戸惑っていると。
「映画観た後に、心に決めたんだ。綺麗な夜景を見せた後、俺の気持ちを込めたプレゼントを持って、麗蘭に告白しようって。」
驚いて、声が出ない。
私を見つめる綾人の顔は、
不安と期待とが入り混じった、複雑な顔をしている。
いつになく、緊張した表情のまま、綾人は口を開いた。
「麗蘭。好きだよ。体だけの関係を続けるなんて、嫌だ。俺と…付き合ってください。」
そう言って、綾人が頭を下げた。