墜愛
目の前に差し出されたバラの花束。
キラキラとしたフィルムに包まれた11本の赤いバラが、私の方を見ている。
胸がいっぱいになって、声を出せずにいると、
頭を下げたままの綾人が、また言葉を続けた。
「…麗蘭がずっと、好きだったんだ。小さい時から、ずっと。」
「え…?でも、いろんな女の人と付き合ってたよね?」
「それは…!」
綾人が顔を上げて、弁解するように話し始めた。
「俺らが高1の時、麗蘭が『女慣れしてる男の人にリードされた方がいい』って言ってたから。」
「え?私、そんなこと言ったっけ?」
「言ってたぞ。その頃、仲良かった南さんと、そんな話してた。」
「みなみんと…?ああ。」
その頃仲良かったみなみんは、
高1の一学期に、3年の先輩から告白されて、
付き合おうか悩んでいた。
その時、彼女の背中を押すために
『女の扱いに慣れてる人にリードされた方がいいって!』
なんて、アドバイスしたような気も…する。
「その話聞いて、俺、経験値上げようと思って色んな女子と付き合ったんだよ。高1の夏休みに、色々勉強して、雰囲気も変えて、モテるように努力したのも、そのため。」
「あと、正直…他の女と付き合って、麗蘭が嫉妬してくれないかなって期待する気持ちもあった。…ま、全然、妬いてもらえなかったけど。」