時と姿を変えた恋
もう一度会いたくて
しばらくは彼のことを思い出していた。そして、どうして隣の市に住んでいるんだろうなどと思った。前は違うところに住んでいたはずだからだ。
結婚してしばらくお子さんに恵まれなかったのは知っているが、娘の早樹とひとつ違いということは、そう遠くなくお子さんも出来たんだと知り、少し納得した。
激務だった私は結婚直後に体調を崩した。休めない仕事だったのもあり、夫と話し合い退職を選んだ。彼は、退職した私にメールや電話をかけてきていた。暇だろ?食事に出てこいよ、奢るぞと気軽な先輩調子で連絡してきた。
でも……私は行かなかった。キスと一緒。行ったら今度こそ止まらない。
退職前。彼に手紙を書いた。そして伝えた。来世があれば一緒になりましょうと。
その頃、ドラマか何かでそういう台詞があったのだ。半分本気、でもよく聞いた台詞だから冗談にも取れる。
連絡が来たくらいだ、冗談だと思ったのかもしれない。それからしばらくして連絡は途絶えた。
そして、再会したのがあのピアノ発表会だった。