時と姿を変えた恋
「そうでしたか」
見るとそろそろ早樹が終わりそうだ。
「三枝。携帯連絡先交換しよう」
「わかりました」
このために来たようなものだ。わかっている。無言で交換すると、彼は早樹が終わりそうなのを察して言った。
「……連絡する。いいよな、先輩なんだから」
「ええ。ピアノ教室が同じで、子供も知り合いですので、何かあればご連絡ください」
あの頃のように、彼を翻弄するような話し方をした。
「ああ、何かあるから連絡するよ」
茶目っ気のあの懐かしい目で彼は私を見て答えた。
「志田さん……」
「じゃあな、また」
そう言うと、彼は背を向けて帰って行った。