時と姿を変えた恋

「まあ、それならいいけどね」

 彼女の髪の毛を確認して、家族で車に乗り込むと会場へ移動した。

 駐車場で車を降りたときに、早樹が手を振っている人がいる。その先を見ると、素敵な子供スーツを着た男の子。

「拓也くーん!」

 私はとりあえず、その拓也君のお母さんに向けて頭を下げた。きっと、教室の友達なんだろう。

 うちは駅に近いので、早樹はひとりで教室へ通っている。健司を連れて行くと余計なことをするのでそうしているのだ。そのせいもあって、他の父兄とあまり接点がない。

「お友達なの?」

「うん。格好いいでしょ?菫ちゃんも拓也君が好きなんだよ」

 菫ちゃん()、ね。つまり、早樹も好きなわけだ。なるほどね。どうりで一生懸命おしゃれしていたわけだな。発表会のためじゃなかったのか。

 夫は健司と手を繋いで歩いている。駐車場はうろうろすると危ないからだ。荷物を持って、先に入るんだろう。目配せされた。私は頷いて、早樹の荷物を持って歩き出した。
< 3 / 42 >

この作品をシェア

pagetop