時と姿を変えた恋
「まあ、それならいいけどね」
彼女の髪の毛を確認して、家族で車に乗り込むと会場へ移動した。
駐車場で車を降りたときに、早樹が手を振っている人がいる。その先を見ると、素敵な子供スーツを着た男の子。
「拓也くーん!」
私はとりあえず、その拓也君のお母さんに向けて頭を下げた。きっと、教室の友達なんだろう。
うちは駅に近いので、早樹はひとりで教室へ通っている。健司を連れて行くと余計なことをするのでそうしているのだ。そのせいもあって、他の父兄とあまり接点がない。
「お友達なの?」
「うん。格好いいでしょ?菫ちゃんも拓也君が好きなんだよ」
菫ちゃんも、ね。つまり、早樹も好きなわけだ。なるほどね。どうりで一生懸命おしゃれしていたわけだな。発表会のためじゃなかったのか。
夫は健司と手を繋いで歩いている。駐車場はうろうろすると危ないからだ。荷物を持って、先に入るんだろう。目配せされた。私は頷いて、早樹の荷物を持って歩き出した。