時と姿を変えた恋

「そうですね。出会う順番ってありますよね。来世どういう順番で会えるかわからない。でも、あのときの気持ちに嘘はない」

「俺はロマンチストじゃないんでね。あまり信じてないよ、来世なんて」

「あら、どうします?本当に私が来世、今より魅力的になって目の前に現れたら?」

「あはは、そりゃ楽しみだな」

「私も楽しみです。志田さんがその時に今みたいに格好いい姿で現れて、フリーだったら?どうするかなあ」

「おい、三枝。ったく、敵わないな」

 そう言って笑いながら別れた。彼には言わなかったが本音はあった。

 私が一緒になりたいと思ったのはあの頃のあなたです、と。

 それ以降、彼が連絡してくることはなかった。

 もしかして、呆れられた?それとも、別な女性と浮気中?聞くのも野暮。

 そしてなぜか一年後、ピアノ教室をやめてしまった息子さんのせいで発表会でも会えなくなった。

 息子さん、ピアノ教室やめたんですか?メールで聞いたが既読にならない。そのままになった。
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