時と姿を変えた恋
「芙美、受付は済ませた。席を取ったからこっち」
そう言って、目配せする。私は健司の手を握ってホールへ入ろうとした。すると、後ろから声がする。
「三枝?」
振り向くと彼だった。隣には受付を済ませたんだろう、彼の息子と奥さん。
「……志田さん……」
「パパ、お知り合い?広田さんのママ」
「ああ、会社の後輩だ」
彼が射貫くような鋭い目で私をじっと見ている。
見ないで欲しかった。久しぶりに会えるとわかっていたら、もう少しきちんと化粧をしてきた。
今日は自分のことは後回しで、早樹にかかりきり。空いた時間は健司に取られて、自分の化粧もキチンと出来ていない。