好きな人と暮らす初めての日
　私が妖精でごはんを必要としないから、一度もごはんなんて与えられたことはないし、お風呂にも入れられたことがない。

　たまに気まぐれで与えてくる本だけが私の楽しみだった。
　本がぼろぼろになる程には繰り返し読んだ。
　本から色々な知識を得て、外の世界で所謂普通な暮らしというのに憧れを抱いた。


　まあ、そんな憧れを抱いたところで、あの男からの暴力が止むことはなかったが。

　オリバーが機嫌が悪い日は刃物を取り出してくることがあり、その時は本当に殺されてしまうと思って泣いてしまい、もっと酷いことをされるなんてことはザラにあった。
　切りつけられたことで血が止まらなくなり、何度も死を覚悟した。

　傷が癒える前にまた次の傷をつけられ、私の体はいつもぼろぼろだった。
　これならいっそ死んでしまった方がいいのではないかと、何度思ったことか。

　だが自分で命を断つなんてことはできないし、あの男は頭に血が上ったとしても、私が死ぬ程の暴力は振るってこなかった。
　死にそうになったことは何度もあるが、致命傷は決して与えてこなかった。

　そうしてあの男からの暴力に耐えている日々を送っていたところで、リュカが現れた。


　これが私があの男のもとで暮らしていた日々の話だ。
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