好きな人と暮らす初めての日

「あの部屋での暮らしを話したらリュカの役に立てる?」


 まだ少し震える声で尋ねる。
 彼は少し驚いたような顔をしてから、また表情を元の優しげなものに戻して口を開く。


「俺の役に立とうとか考えなくていいんだよ。それにリーベから話を聞きたいのは、あいつの刑罰を決める参考にしたいだけだから、嫌ならいいんだ」


 彼が頭を撫でてくる。
 私はまた彼の厚い胸板に顔を寄せる。


「嫌なことを思い出させてごめん」


 彼がぎゅっと更に力強く私を抱きしめてくる。

 その声が暗くて心配になったので、リュカの顔を見ようとするが、彼の力が強くて顔を上げられない。
 「んー」と声を出して顔を上げようとするが、全く敵わない。


「どうしたの、リーベ」


 やっと彼が手を離してくれて顔を上げると、リュカの表情はいつも通りのものだった。
 声が暗かったのは私の気のせいだったのだろうか。


「リュカの顔を見ようとしたのに、リュカの力が強くてあげられなかった」

「なんかバタバタしてると思ったら、そういうことだったのか」


 彼がくすくすと笑う。
 よくわからないけどリュカが笑ってくれてるのならいいか。
< 5 / 52 >

この作品をシェア

pagetop