好きな人と暮らす初めての日
「私の分もごはん作ってくれたの?」
「うん、髪乾かしたら一緒に食べよう」
まさか私の分まで作ってくれるとは思っていなかったので驚く。
空気中の魔力が尽きない限り生きていけるので、食べなくてもいい。
けど、彼が私のために用意してくれたと思うと嬉しいし、その気持ちを無碍にはしたくない。
「あ、妖精って食べなくてもいいんだったか」
彼もその知識はあったらしく、そう言うので慌てて口を開く。
「確かに食べなくても生きていけるけど、リュカがこうやって用意してくれたの嬉しいよ。だから、一緒に食べよ?」
後ろを向き、彼に伝える。
私の言葉を聞いたリュカは嬉しそうに笑う。
やはり彼は笑顔の方がいい。彼が笑ってくれるだけで、私まで幸せな気持ちになる。
「ならよかった。じゃあ、髪乾かすよ」
彼が魔法を使って、私の髪を乾かしてくれる。
昨日キャロルさんにしてもらった時にも思ったが、魔法でこんなことができるのかと驚く。
私の髪を乾かす彼の手つきは優しく、それに安心して、先程起きたばかりだというのに眠気が襲ってくる。
うとうとしていると、彼の声が聞こえる。
「終わったよ」
「ありがとう」
「どういたしまして。眠くなっちゃった?」
「うん、リュカの手が気持ちよくて」
「そっか、可愛い」
いまいち会話になってないような気もするが、彼に可愛いと言われて嬉しい。