スカートを穿いた猫
そこへ、タイミング悪く?良く?お兄ちゃんが現れた。
「げっちゃん〜、て、何してんの二人とも」
ドアの押し合いをやめた私たちの間に気まずい空気が流れる。
片方はウィッグとスカートの女装姿、片方はボッサボサの寝起き姿なのだから仕方がない。
しっかりとメイクまで施した兄がのんびりと「多実、おはよ」と挨拶する。
そして、月太の方を向くとすでに不要になった説明をする。
「この寝起きの子、僕の妹で多実っていうの。げっちゃんと同い年だよ」
「……」
「……」
そんな紹介をされても、二人揃って目を逸らすだけだ。
お互いに挨拶の言葉も出てこない。
すると、私たちの様子を見た兄が察したように手をパチッと叩く。
「もしかして、二人は知り合い、かな?」
「「く、クラスメイト……」」
月太と私の絞り出したような声が重なった。
兄は困ったように笑いながら「あらら」と言うと、私に顔を洗い着替えるよう命じ、月太を自室へ引っ張っていった。