スカートを穿いた猫
大人しく月太のプリントを丸付けして返す。悔しながら満点だ。
「はい、全問正解」
「ん、1個間違い」
月太は私のプリントを手渡すと、ちらりと窓の外を見る。そして、ぼそりと呟いた。
「陽太は無理だろ」
「……」
さっきから私が自然と目で追ってしまう、5組の男子達の中心で太陽のような笑顔の陽太くん。
「あいつ理想高いからな」
月太が陽太くんを"あいつ"なんて気安く呼ぶには訳がある。
なんと、陽太くんと月太は双子で、月太は陽太くんの弟なのだ。
残念ながら月太には陽太くんの持つキラキラはないけれど。
月太はもう一度私の顔をじーっと見ると、ふっと息をこぼした。
「は、鼻で笑ったね!?」
「いやー、まあ、がんばれよ」
「棒読み……!」
月太に抗議の声を上げていると、今度は問答無用で二人揃って先生の注意を受けてしまった。
「五十嵐のせい」
「月太のせい」
罪のなすりつけ合いは月太の「陽太に話してやろ」の言葉で簡単に幕を閉じたのである。