アンハッピー・ウエディング〜後編〜
『で、どうよ?無月院の姉さん。調子は』

調子?…調子は…。

「まだ熱が高いみたいで…。今は薬で寝てるけど、元気ないよ」

絶対、今朝のホラー映画のせいだろ。

朝っぱらから具合悪いのにあんなもの観てるから、熱が下がらないんだ。

やっぱり俺、今日は朝から学校休んで、寿々花さんの面倒を見てるべきだったな。

判断を誤った。申し訳ない。

『そうか。そりゃ可哀想になー』

『見事に悠理さんからもらっちゃってますね。やれやれ、これだから人間は。脆弱で困りますよ』 

乙無が、雛堂の横で溜め息をついているのが聞こえてくる。

…うるせーよ。あんたも人間だろうが。

「明日も寿々花さんの熱が下がらなかったら、休むつもりだから…」

朝までには熱も下がるだろう、とは思っているが…。

明日になっても寿々花さんの具合が悪そうだったら、適当に理由つけて、俺も休もう。

どうせ登校したって、心ここにあらずで全然授業に集中出来ないだろうし…。今日みたいに。

『おー、そうしろ。その方が良いって』

『そうですね。今度は、日本史の授業でハンバーグの作り方を読み上げかねませんし』

『だな。今日の星見の兄さんの様子見てたら、マジでやりかねんわ』

…大袈裟だろ。それは。

全くあんたら、他人事だと思って適当言いやがって…。

「…用件は終わったか?寿々花さんを起こしたくないから、もう切るぞ」

『その前に、午後の世界史の授業で課題が出たので、それだけ伝えておきます』

何だと。

『まぁ、今の悠理さんには、課題なんてやってるような心の余裕はないと思いますが…。教科書の4章を総復習してこい、だそうです』

『来週そこの範囲の小テストやるから、しっかり復習してこいってさ。めんどいよなー』

全くだ。

いくら課題を出されたって、小テストがあるからって、今の俺に寿々花さん以上に優先すべきものは何もない。

残念だったな。小テストは二の次だ。

…聞かなかったことにして、ほっとこ。

小テストは…まぁ、気合いで何とかなるだろ。

『そんじゃあ、二人揃ってお大事にー』

と言って、雛堂達との通話を終えた。

心配してくれる人がいるっていうのは、良いことだな。非常に気が楽になる。

あとは、無事に寿々花さんが回復してくれれば、何も言うことはないのだが…。

こればかりは、寿々花さんの治癒力に任せるしかない。
< 100 / 645 >

この作品をシェア

pagetop