アンハッピー・ウエディング〜後編〜
夕方になって日が暮れても、寿々花さんは眠ったまま、目を覚まさなかった。

よく眠ってるし、わざわざ起こさなくて良いかと思って…そのまま寝かせておいた。

俺はと言うと、寿々花さんを一人置き去りにして、自分の部屋でぐーすか寝るのも気が引けて。

寿々花さんの枕元に座って、ずっと様子を見守っていた。

大袈裟かもしれないけど。過保護かもしれないけど…。

でも、どうせ自分の部屋に戻ったって、心配で眠れないし。

俺は風邪を感染した身だから、感染される心配もないしな。

傍にいても、多分大丈夫だろう。

「…zzz…」

「…」

俺は、眠っている寿々花さんの寝顔を、まじまじと見つめた。

相変わらず、無防備な寝顔だよ。大層間抜け。
 
…俺が風邪で寝込んでいたとき、寿々花さんも、今の俺と同じ心情だったんだろうか?

「…早く元気になってくれよ。頼むから」

俺は眠っている寿々花さんに、そっと呟いた。

あんたが調子悪くて寝込んでたら、俺だって、何も手につかないんだから。

 



…ぐっすりと眠っていた寿々花さんが目を覚ましたのは、深夜、日付けが変わる頃だった。

「…ん…」

ずっと固く閉じられていた瞼が、ぱっちりと開いた。

…あ、起きた…。 

「起きたか。…気分はどうだ?」

「ふぇ…?悠理君…?」

寝惚け眼で、じーっとこちらを見つめ。

「今、何時…?そこにいたの…?ずっと?」

と、聞いてきた。

「いたよ、ずっと。今は夜の12時過ぎだ」

「…悠理君も寝たら良いのに…」

「良いんだよ、別に。どうせ寝られないよ。あんたを置き去りにして」

「…」

寿々花さんは、ぽやんとした顔で、不思議そうにこちらを見つめていた。

「そんなことより…具合はどうだ?」

少しは気分、良くなっただろうか?
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