アンハッピー・ウエディング〜後編〜
…なんて、朝からそんな風に寿々花さんの早口言葉遊びに付き合わされたんだ、っていう話を。

雛堂と乙無に、半ば愚痴混じりに話して聞かせたところ。

「へー。可愛いじゃん」

「悠理さん、完全に保護者ですね」

…とのこと。

「可愛くねぇよ…。付き合わされる俺の身にもなってみろよ」

高校生にもなって。早口言葉だぞ?
 
そういうのは、小学校低学年で卒業するもんだと思ってたよ。

「良いじゃん、楽しそうで。星見の兄さんがいくら口を尖らせたって、全力で惚気けてるようにしか聞こえんわ」

何でそうなるんだよ。

「文句言いつつ毎回付き合ってあげるんだから、悠理さんも満更じゃないってことですもんね」

乙無まで。

ちげーよ。満更でもないんじゃなくて、断ったら別の遊びに付き合わされるから。

お医者さんごっことか。おままごととか。

それに比べたら、まだ早口言葉の方がマシだったから…仕方なく。

「ったく、リア充共がよ…。こうなったら、腹いせとばかりに自棄食いしてやるわ。乙無の兄さん、メニュー取って」

「どうぞ」

雛堂と乙無は、テーブルの上にメニューを広げた。

…え?今、俺達が何処にいるのかって?

喫茶店だよ。カフェ。

ほら、以前俺と寿々花さんがかわりばんこで風邪引いたとき、お見舞いに来てくれたお礼。

しばらく日数が空いてしまったけど、ちゃんと覚えてたぞ。

今日、こうして二人と一緒に喫茶店にやって来た。

パンケーキセット奢るって約束だから。

「チョコバナナにするか…いや、メープルも捨て難い…」

「僕はイチゴカスタードパンケーキにしますね。飲み物はロイヤルミルクティーで」

「女子かよ」

…良いから、早く決めてくれ。

「よし、やっぱりチョコバナナにしよ。プラス200円でパンケーキ倍盛りだってよ。星見の兄さん、倍盛りしても良い?」

「どうぞ、遠慮なく」

「やったぜ。じゃあ、プラス100円で生クリームトッピングもつけさせてもらおーっと。飲み物はメロンソーダで」

今回はお礼だから、好きなものを好きなだけ頼んでくれ。

まぁ、乙無が本気を出したら、店内のメニュー全制覇も夢じゃないから。

乙無に限っては、ちょっと遠慮してもらわないと困るが。

…それから。

この店、テイクアウトも出来るみたいだから…。寿々花さんにも、パンケーキ買って帰ってあげよう。

俺が熱出したとき、色々世話を焼いてくれた恩を忘れてはいない。

「決まったか?注文」

「おう。店員さん呼ぼっか。すみませーん」

雛堂が片手を上げて、店員さんを呼び。

各々、パンケーキとドリンクを注文した。
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