アンハッピー・ウエディング〜後編〜
いなかったか?小学校の時。

持ってきちゃいけない漫画とかお菓子とか持ってきて、叱られて没収されるアホ。

俺が小学生の時も、そんな奴いたよ。

学校で漫画の貸し借りをしてて、それを別のクラスメイトにリークされて、敢え無く没収されてた。

何処に密告者がいるか分かったもんじゃない。

そういうことをやるなら、せめて教室以外の場所でやれよ。

見つけてくださいって言ってるようなもんじゃん。

一応、包装紙に包まれているから、パッと見「そう」とは気づかれないだろう。

が、ここでこうして話してたら、他のクラスメイトの耳に入る可能性もある訳で。

一番困るのが、雛堂だけじゃなく俺も共犯者とみなされて、一緒にお縄になること。

雛堂がアホなだけだから。俺関係ないなら。

…こいつ、マジで何考えてんの?

「冗談じゃないんだよな?…本当に持ってきたのか?」

「え?うん。マジだけど」

やっぱりアホだ。

こんなアホとは、関わり合いにならないのが一番。

「…今日からあんたは他人ってことで、もう話しけないでくれ」

「ちょ、それはいくらなんでも冷たくね…!?自分と星見の兄さんの仲だろ?」

危うく停学処分になりかねないポカをやらかす奴と、どんな仲になるって?

他人だ、他人。

「何で学校にそんなものを持ってくるんだ、あんたは」

周囲に聞こえないよう、俺は小さな声で聞いた。

アホなのか、それとも停学処分になりたいのか?

「いや、だってしょうがないじゃん。家に置いとく訳にはいかなかったんだよ」

「何で?」

「何でって、そりゃ争いの火種になるからだよ。こんなもの家に置いといたら、一時間と経たずにチビの玩具になっちまうだろ」

…あ、そう。

知らんけど。

駄目なのか?チビ…弟の玩具にしたら。

「自分もびっくりしたんだぜ。昨日突然、覚えのない荷物が急に届いてさぁ…。何かと思って開けたらこれだよ」

「覚えのない荷物って…大丈夫か?それ」

身に覚えのない荷物は、受け取り拒否が基本だろ。

「いや、開けてみて中身を見て思い出したんだよ。そういや、夏が始まる前にお菓子の懸賞ハガキを送ったんだわ」

「…懸賞ハガキ?」

「お菓子についてるシールを何枚か集めて送ったら、抽選で何名様にプレゼント、って奴だよ」

あー、あれな。たまにあるよな。

俺もやったことあるよ、それ。

当たった試しがないけどな。人生で一度も。

「…あれって都市伝説だと思ってたんだけど、マジで当たることあんのか?」

「自分も思った。どうせ当たるはずないって、半ばネタのつもりで送ったら、こうして忘れた頃に届いたんだわ」

「…へぇ…」

当たることあるんだ。当たる人いるんだな。

「雛堂、あんたもう一年分の運使い切ったんじゃねぇの?」

「辛辣!…でも、自分もそう思う」

こんなところで、こんなことで運を使い切ってどうするんだ。

今年、まだあと3ヶ月あるんだぞ。

こりゃもう、来年になるまで雛堂には何も良いことがないな。気の毒に。
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