アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「これでも、三等の景品なんだぜ。二等とか一等とか、それどころか特賞だったら、マジで自分の運、今年どころか来年分まで使い果たすところだった」

三等…このゲーム機が三等の景品なのか。

ってことは…。

「二等の景品は何だったんだ?」

「最新オーブンレンジ」

…そっちの方が良かったな。

「一等は?」

「最新ロボット掃除機」

やっぱりそっちの方が良かったな。

「特賞は…?」

「チョコレート。一年分」

「…それは要らんな」

そんなものが当たったら、漏れなく家族全員虫歯だよ。

「…で、何でその景品を俺に…?」

「いやー。当たったのは良いんだけどさ、自分はもうゲーム機は持ってるし…。2台も同じものあっても、邪魔なだけだし」

「使わなくても、スペアとして置いておけば良いだろ?いつか壊れたとき用に…」

「そんな滅多に壊れるもんじゃねーし。第一、家には置いとけないんだよ。チビ共が虎視眈々と狙ってるから」

あぁ…そうなんだっけ。

子供達にとっては、棚からぼた餅って言うか…。

タダで手に入って、これほど嬉しいものはないだろうな。

だってこれ、最新のゲーム機なんだろ?

新品で、定価で買ったらいくらするのか知らないけど…。

多分、一万円は軽く超えるものと思われる。

小学生や中学生にとって、一万円はデカい。

「昨日もギャーギャー騒いで大変だったんだからな。自分が欲しい、いや自分も、って。おめーらのじゃねーからって話だよ」

「ま、まぁ…」

「家に置いといたら、間違いなく争いの種になるだろ?仕方ないから持ってきたんだよ」

一応雛堂にも、雛堂なりの事情と理由があったらしい。

家に置いておいて、小さい子達の間に余計な争いを生むよりは。

争いの種は目に届かないところに隠すのが一番、ということで、仕方なく学校に持ってきたと。

その事情は分かったけど…。もし先生達にバレたら、別の問題が発生するだろうに。

「折角だから、星見の兄さんにあげようと思って。遅れて持ってきた誕生日プレゼントってことで」

一ヶ月以上遅れてんな。

「いや、そう言われても…。…もらう訳にはいかないだろ」

「何で?」

何で、って…。

それはまぁ…色々と理由はあるけども。

「だって…高いだろ?それ。定価で買ったらいくらだよ?」

「3万ちょっとくらいかな?」

ほらな。言わんこっちゃない。

うちの3週間分の食費じゃん。

ホイホイと人にプレゼントする値段じゃねーよ。恐縮するわ。

椿姫お嬢様じゃあるまいに。
< 116 / 645 >

この作品をシェア

pagetop