アンハッピー・ウエディング〜後編〜
幸いなことに、密告者はおらず。

俺は誰にもバレずに、ゲーム機を持って家に帰った。

ホッ。

バレなきゃセーフってことで。

帰って、早速包装紙を破くと。

中から、新品の立派な箱に入ったゲーム機の本体が出てきた。

へー…。こんなんなってんだな。最近のゲーム機…。

これが、定価3万円…。そう思うと、壊すのが怖くて触れないな。

このまま箱に入れて、一生しまっておきたい気分。

それはそれで勿体ないか…。

すると。

「…?悠理君、それなぁに?」

「おっ…。来たな?」

寿々花さんが、おびき寄せられるようにリビングにやって来た。

良いところに来た。

「雛堂にもらったんだよ。最新のテレビゲーム機だってさ」

「ひなどう…?悠理君のお友達?」

「そう、友達」

「神様の眷属の方?」

「…神様の眷属じゃない方だ」

「そっちかー」

そういう覚え方なのか?寿々花さんの中で。雛堂と乙無のこと。

乙無はともかく、「じゃない方」と呼ばれる雛堂が気の毒だ。

ともかく…。

「そいつがくれたんだよ。お菓子の懸賞で当たったんだって」

「ほぇー」

「ソフトもついてるらしくて、すぐに遊べるんだって。…やってみるか?」

「うん、やるー」

寿々花さん、興味津々。

新しい玩具を買ってもらった子供のようである。

あとは、この新しい玩具を、寿々花さんが気に入ってくれたら良いんだが。

これまで寿々花さんには色々、おままごとセットとかシャボン玉とか、玩具を買ったものだが。

こんなに高価な玩具は、初めてだな。

何なら、俺も初めてだよ。

携帯用ゲーム機だったら、小学校の時持ってたんだけど…。

今ではもうすっかり、埃を被ってしまっている。

ってか、何処にやったかな…。戸棚の奥の奥の方にしまい込んで、封印されているはずだ。

もう動かないかもな。

俺自身、あんまりゲームに熱心なタイプじゃなかったからな…。

ゲームなんて、もう何年ぶりだか。

テレビに繋ぐゲーム機は初めてだし。

「えぇと、このコードを繋いで…。コンセントに差して…起動ボタンを押す…と」

パッ、とテレビ画面がついた。

お、来た来た。

どうやら、ちゃんと動くようだな。

「凄い、凄い。悠理君、これ動く。動くよ」

「あぁ…動いてるな」

初めてのテレビゲームに、二人して挙動不審。

我ながら田舎者…と言うか、貧乏性だなって。

果たしてこんな俺達で、ゲームを楽しめるのだろうか。
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