アンハッピー・ウエディング〜後編〜
こうなったら、もう覚悟を決めるしかなかった。

…なんか、俺こういうことばっかりだよな。

やっぱり無理だから、って逃げ出そうとしない辺り、偉いと思わないか?

と、心の中で虚しい自画自賛をしていると。

「ところで、ペア分けはどうするんですか?このまま四人で入ります?」

乙無が俺達にそう尋ねた。

「僕は一人でも良いですけど」

「いや、四人いるんだから、分けるなら二人ずつが無難じゃね?」

そうだな。

乙無が一人で入ったら、俺と雛堂と寿々花さんの三人になってしまう。

二人も引率するのか。俺。

「出来ればここは女の子と入って、お化け屋敷の定番のアレをやりたいよな」

と、雛堂。

「…何だよ?お化け屋敷の定番のアレって」

「ほら、『きゃっ、○○君、こわーい』『大丈夫だよ、俺が守ってあげるから』みたいな…」

何?その茶番。

それ、マジでやる人実在すんの?

目の前でそんな下らないことやられたら、うんざりして唾吐きかけたくなるけど。

「前から思ってましたけど、大也さんってしょうもないアニメと漫画の見過ぎですよね」

乙無が一刀両断。

同感。

「何だよ!リア充には分かるまい。非モテ男ほど、そういうベッタベタの定番シチュに憧れるもんなの!」

あっそ。

どっちにしても下らねぇよ。

あと、寿々花さんはおよそ、普通の女子ではないからな。

百歩譲って雛堂と一緒に入ったとして、『きゃっ、こわーい』とはならんと思うぞ。

精々、妄想して満足しておくんだな。

「ってな訳で無月院の姉さん、ここは自分と一緒に…」

「私、悠理君と一緒に入る」

寿々花さん、ばっさり。

考える余地もない。

「…一瞬でフラれましたね、大也さん」

「…言うな…」

ちょっと雛堂が可哀想になったけど。

まぁ雛堂は自業自得だな。下心全開の発言ばっかしてるからだよ。

「畜生、やっぱり駄目か…。可愛い後輩より、旦那の方が良いんだな」

「自分で可愛いって言います?」

「仕方ねぇ。乙無の兄さん、代わりに自分の腕に抱きついて良いぞ」

「気持ち悪いですから。僕で妥協しようとしないでください」

どうでも良いけど、人前で男同士がくっつくなよ。

下手な誤解が生まれるからな。

…で。

「…寿々花さん、本当に俺と一緒で良いのか?」

多分、俺は頼りないぞ。

さっきの雛堂じゃないけど、『きゃーこわーい』ってなっても、俺は守ってやれないと思うぞ。

心臓に剛毛が生えてる寿々花さんでさえビビるレベルなら、恐らく俺も負けないくらいビビってるはず。

努力はするつもりだけど。…頼り甲斐があるとは思えない。

しかし。

「うん、悠理君と一緒が良い。悠理君と一緒なら、怖いこと何もないもん」

…何処から出てくるんだ?その自信。

俺のあまりの頼りなさに、幻滅しても知らないからな?
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