アンハッピー・ウエディング〜後編〜
俺がぽかーんとしていると。

「すげっ…!3スト残しで圧勝かよ…!」

と、感嘆の声をあげる雛堂。

さ、さんすと?

…って、何?なんか凄いの?

「しかも、その世界戦闘力…。無月院の姉さん、それVIPマッチかよ…!?」

せかいせんとうりょく?びっぷまっち?

雛堂の口から、俺にはよく分からない単語が飛び出してして困惑している。

「ふぇ?…うん。そうみたいだね」

何なら、寿々花さんもよく分かってないみたい。

「マジ?どうなってんの?ゲーム初めてだって聞いたんだけど、どっかでスマシスやったことあんの?」

…すましす?

「すましすってなぁに?」

「今姉さんがやってるゲームだよ!『大乱戦!スマッシュシスターズ』」

成程、それで略してスマシスか。

かなり有名なタイトルだよな。

やったことはないけど、さすがに名前くらいは知ってるよ。

「そんな名前なんだー」

寿々花さん、自分がやっているゲームのタイトルすら把握していない。

…つか、何でいつの間にかゲームやってんの?

初期設定は…?

「初心者?マジでやったことねぇの?」

「うん。さっきお家に帰ってきて、今日初めてやったー」

「嘘だろ。初心者なのに、たった数時間でその世界戦闘力…!VIP入りRTAかよ…!?」

…さっきから、雛堂が何のこと言ってんのか全然分かんねぇんだが。

雛堂の声がめちゃくちゃ上ずってるから、何やら寿々花さんが凄い偉業を成し遂げたんだということは、何となく分かる。

「…さっきの試合、寿々花さんのキャラがボコられてんのかと思ってたけど、違うのか?」

「ちげーよ。You Winって出てたじゃん。無月院の姉さんがボコられてたんじゃなくて、無月院の姉さんが一方的に対戦相手をボコってたんだよ。しかも、VIPタイマンで3スト残しとかいう完膚なきまでの圧勝で」

「それって凄いことなのか?」

「野球習い始めた翌日に、甲子園のマウンドでノーヒットノーラン達成してるようなもんだぞ」

それは凄い。凄過ぎる。

もう天才とかそういう次元じゃない。

「今日初めてスマシスプレイして、数時間でVIPに昇格とか…化け物かよ…!?」

「よく分からねーけど、寿々花さん、あんた凄いらしいぞ」

「そうなんだ。よく分かんないけど、やったー」

…で、それは良いんだけど。

…それよりも。

「…寿々花さん。あんた、何でゲームやってんの?」

「ほぇ?」

ほぇ、じゃないんだよ。

いつの間に、何でゲームが始まってんの?

面倒な初期設定は?アカウントの作成は?

実はやらなくても良いのか?

てっきり、最初にこれらの設定をしないとゲームが始められないものと思い込んでいたけど。

実はスキップ可能で、設定なんかしなくてもゲームをプレイすることが出来る?

「…勝手にやっちゃ駄目だった?」

「え?いや…。別に良いけど」

「で、初期設定やアカウント作成…それに、さっきオンライン対戦もしてたよな?自分で設定したのか?」

と、雛堂が尋ねた。

え?オンライン対戦?

てっきり、コンピューター相手に対戦しているのだと思っていたのだが。

…もしかして、違うのか?
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