アンハッピー・ウエディング〜後編〜
本日二回目の選択肢が出てきたのは、映画を観た後。

1、面白かったねと言う。2、まぁまぁだったねと言う。3、イマイチだったねと言う。

この三つの中から選べってさ。

「そんなこと言われても…。私達はその映画観てないのに、面白かったのかどうかなんて分からないよね」

「全くだな…」

面白いコメディ映画もあれば、つまんないコメディ映画だってあるだろ。

果たして、どの選択肢を選ぶのが正解なのか…。

「さっき主人公に向かって、コメディ映画のことディスってたし。イマイチだったんじゃね?」

「そうかな?つまらなさそうと思ってたけど、実は意外と面白かった、と思ってるかもしれないよ」

それは…。そう言い出したらキリがないけど。

「それに、面白くなかったとしても、面と向かって相手に『イマイチだったね』とは言わないんじゃないかなぁ」

「じゃあ、寿々花さんは選択肢1か、選択肢2が良いと思うのか?」

「悠理君はどう思う?」

…そうだな。

コメディ映画に否定的だったし、主人公に対して「そんな趣味なのかよ」と言うくらい馬鹿にしてたんだぞ?

例え面白かったとしても、「面白かったね」と言われて素直に同意はしないだろ。

いかにも捻くれてそうだもんな。

じゃあここは、間を取って「まぁまぁだったね」にするか?

いや、中途半端な言い方は良くない。白か黒か、はっきりさせようぜ。

「俺は三つ目…『イマイチだったね』で良いと思う」

あんまり考え過ぎも良くないからな。

現状俺達、このヤンキーに「趣味が悪い」と思われてるみたいだから。

ここはヤンキーの意に沿うような感想を述べて、主人公と趣味が合うアピールをするべきだと思うんだよ。

「そっかー。じゃあそれにしよう」

寿々花さんは、三つ目の選択肢を選んだ。

さっきの映画、イマイチだったね。と。

さぁ、ヤンキー風イケメンの反応は。

露骨に嫌そうな顔をして、一言。

『そういうことさぁ。思ってたとしても、相手に言うのはどうかと思う』

…ばっさり。一刀両断。

今日一日だけで、ヤンキーイケメンの主人公に対する好感度。

上がるどころか、下がりまくってる気がする。

…俺の選ぶ選択肢、全部外れまくってね?

俺は乙女ゲームには向いてないってことなのかもしれない。乙女じゃないんだから当たり前だが。

「駄目だったかー…」

「…雰囲気最悪だな…」

折角デートに出掛けたのに、むしろデートに行く前より好感度下がってんじゃねぇの?

ヤンキー風イケメンは、デートの最後に。

『今日はお互い、時間の無駄だったな』

と、吐き捨てるような捨て台詞を吐いて帰っていった。

あんたこそ、そういうことを思ってたとしても相手に言うんじゃねぇよ。

初デート、無事に惨敗。

…正直、もう既に心折れそうだな。
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