アンハッピー・ウエディング〜後編〜
会議で話し合われた事項は、もう一つ。

「各クラスの出し物も、決めなきゃいけないってことだったけど…」

「出し物なぁ…どうすっかなー」

男子部も女子部も、各クラスで出し物を企画するんだってさ。

焼きそばやクレープ、ドリンクなんかの食べ物を売る屋台を出したり。

教室の中に、迷路やお化け屋敷を設営したり。

小さい子供向けに、ヨーヨー釣りや射的をやるクラスもあるらしいな。

「多数決を取るにしても…ある程度は決めておくべきだよな?食べ物系にするのか、それともイベントにするのかくらいは…」

「って言ってもなー。どうやったって新校舎には負けるだろ。そもそも予算が違うんだからよ」

本当。不公平の極みだよな。

各クラスの出し物を用意する費用として、学校からいくらかお金をもらえることになっている。

が、その金額は、女子部と男子部で大きな差がある。

表向きは、クラスの人数が違うから、という理由だったが。

結局のところ、この学校の文化祭は女子部の生徒達が楽しむ為のものであって。

男子部の生徒は、単なるおまけ的な存在でしかないという訳だ。

予算が限られると、必然的に企画のクオリティも下がり。

ますます、女子部の出し物とは差がついてしまう一方。

こんなんじゃ、誰もやる気出さねぇっての。

予算、人員共に、女子部に比べて遥かに貧弱なのに。

果たして、俺達で何が出来るのやら…。

「いっそ適当に済ませるか?クラスメイト全員で折り鶴でも折って、それを展示するだけ、とか」

と、提案する雛堂。

やる気ねぇなぁ…。

「それ、多分誰一人客は来ないと思うぞ」

「良いんだよ、来なくて。楽出来て良いじゃん。当日だって、これなら店番に立つ必要もないし」

…俺はそれでも良いと思うけど。

「果たして、そんな企画書が委員会に通るかな。女子部のクラスじゃ、やれタピオカドリンクだの、フルーツパフェだの、スタンプラリーだのを企画してるのに」

俺達だけ、そんな手抜き満載の企画書を提出しても。

「もう少しよく考えて」と、突き返されるのがオチじゃね?

「ぐぬぬ…。やっぱり駄目か…」

「食べ物系にせよ、イベント系にせよ…それなりに女子部と比べて遜色ない企画を立てないと…」

「遜色ないっつったって、どう考えても女子部の出し物に釣り合う訳ねーじゃん」

…それを言っちゃおしまいだよ。

確かにそうかもしれないけど…。

「男子部は予算だって少ないし。それに、食べ物の屋台をやるにしても、女子部は元々料理上手な女の子が多いんだからさ」

「…そうだな…」

料理上手な女子生徒が作った、焼きそばやお好み焼きやフライドポテト…。

うん。男子部の俺達がいくら頑張っても、敵う気がしない。

きっと、お洒落な料理とかたくさん作るんだろうなぁ。

喫茶店のふわふわパンケーキとかさ。可愛らしい飴細工とかさ。

そんなの屋台に出されたら、俺達には手も足も出ない。

まぁ…別に張り合う必要はないんだけどさ…。
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