アンハッピー・ウエディング〜後編〜
しばし、雛堂と二人で「うーん」と考え込み。

唐突に、雛堂が口を開いた。

「畜生…。仕方ない、こうなったら奥の手を使おうぜ」

…奥の手?

「…何だよ?奥の手って」

「大丈夫。うちのクラスには悠理兄さんがいる」

俺?

「こうなったら、悠理兄さんのお袋の味で勝負だ。『悠理兄さんのお袋食堂』みたいな名前で食堂を開いて、悠理兄さんの手料理を振る舞おう」

正気かよ。何言ってんだ雛堂。

人間、追い詰められると形振り構わなくなるんだなって。

「そんなんで人が来るかよ。つーか俺の負担が重過ぎんだろ」

「大丈夫だって。悠理兄さんの手料理、美味いって評判だし。きっと大勢の客が来るって」

誰に評判なんだよ。聞いたことねぇぞ。

もうちょっと真面目に考えろ。真面目に。

しかし、連日に渡る面倒な会議のせいで、雛堂はもう頭の中がパンク寸前にあるらしく。

「他の候補は…もう適当で良いや。合唱発表会と、本の朗読会、それから人形劇ってことで。よし、この中から明日、クラスで多数決取って決めよう」

適当に、一人でそう決めてしまった。

文化祭実行委員は雛堂なんだから、雛堂に決める権利があるとはいえ。

それはちょっと、あまりにも横暴が過ぎるのでは?

「ってことで、今日はもう解散!はー、疲れたから帰りにアイス買って帰ろーっと」

「あ、おい。ちょっとまっ…」

考えるのやーめた、とばかりに。

雛堂は学生鞄をひっ掴んで、さっさと教室から退散。

…なぁ。

…これ、明日どうなるんだ?
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