アンハッピー・ウエディング〜後編〜
ひでぇ話だよ。泣きたくなるな。

「クラスの出し物でも扱き使われ…。女装までさせられ…」

何だって、俺がこんな目に…。

「出し物?悠理君のクラス、何するの?」

「え?あぁ…えぇと、食堂…」

…で、良いんだよな?『星見食堂』って言ってたし。

「食堂?喫茶店みたいな?」

「さぁ…どうなんだろう。まだ詳しいことは決めてないけど…。とにかく食べ物の店をやるらしい」

「凄いね。悠理君がお料理作るなら、きっと大繁盛だよ。大行列だよ。三ツ星レストランだよ」

それは言い過ぎだっての。

良いか、寿々花さん。誤解してるのかもしれないが。

男子部の教室は、旧校舎にあるんだからな。新校舎から登り坂をひたすら歩いて、15分もかかるの。

そんなところに、わざわざ俺の手料理を食べる為に客が来るかよ。

新校舎にだって、お洒落な店はたくさん出るんだろうし。

最悪、一人の客も来ずに閉店…なんてことも有り得るかもしれない。

その時は俺、何してたら良いんだ?

クラスメイトの為に、賄いでも作ろうかな。

「どうせ暇だって。誰も客なんて来ねーよ」

「大丈夫だよ。悠理君のご飯美味しいもん。皆美味しいって言ってくれるよ、きっと」

「…あ、そ…」

まぁ、そう言ってくれる気持ちは嬉しいってことで。

「それより、寿々花さんのクラスは何をやるんだ?出し物」

「ふぇ?」

「何かやるんだろう?もう決まったのか?」

「うん。昨日決まったよー」

とのこと。

へぇ。もう決まってたのか。

女子部の方は、予算も人員も豊富だからなぁ。

開店する前から潰れかけてるうちの『星見食堂』とは、訳が違う…。

「何するんだ?寿々花さんのクラスは」

「カフェだよ」

カフェだって。もうこれを聞いただけで、最高にお洒落。

きっと、今流行りのふわふわパンケーキとか、タピオカドリンクとか、台湾カステラとか、マリトッツォとかが出るんだろうな。

…って、それはもう古いか…。

「寿々花さんのところも食べ物系なんだな。寿々花さんも店の手伝いするのか?」

「うん。ホール係なんだー。キッチン係をやりたいって言ったんだけど、クラスメイトに止められちゃって…」

そりゃあんたに厨房なんか任せたら、あっという間に教室が炎上しかねないからな。

必死で止めたであろうクラスメイトの皆さん、ナイスな判断だ。

「楽しそうじゃないか。頑張れよ」

「うん。メイドさんの格好なんてするの初めてだから、楽しみー」

…ん?

…メイド?
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