アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「そっかー。悠理君、去年まで毎日これ着てたんだー…」

しみじみ、と学ランを眺める寿々花さん。

…そんなまじまじと見るようなもんじゃねーだろ。

学ランなんて。非常にありふれた制服だからな。

「そう、去年まで毎日着てたからさ…。結構よれよれだし、匂いも…」

「匂い?…くんくん」

「ちょ、嗅ぐなって、馬鹿」

あろうことか寿々花さんは、俺の学ランの首元に顔をくっつけて、匂いを嗅いでいた。

アホなのか。勇者か?

「臭いだろ。ずっとしまってたから…。着るつもりなら、一度洗濯するよ」

「ううん、大丈夫。何だか…染み付いた悠理君の匂いがする」

「そうか。急いで洗濯しよう」

可及的速やかに洗濯しよう。

何ならもう、タンスごと丸洗いしたい気分。

自分の匂いって、自分ではなかなか分からないもんだからなぁ…。

知らない間にめちゃくちゃ臭くなってるとか、あるある。

「これ着たい。悠理君の制服〜」

何故嬉しそうなのか。

別に良いけど…。好きなようにすれば。

「私、これ似合うかな?」

「さぁ…。あんたは顔が良いから、学ランだろうと鎧だろうと、何でも似合うんじゃね?」

「ありがとう。悠理君も格好良いから、きっと何を着ても似合うよ。ワンピースとかスカートを穿いても似合うと思う」

それは褒め言葉だと思って良いんだよな?

全然嬉しくはないけど。





…ともあれ、これでお互い、コンテストで着る衣装が決まった。

やれやれ。衣装だけで大騒ぎだよ。全く。
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