アンハッピー・ウエディング〜後編〜
幸先が悪いにも程があるだろ。

これだけ準備万端整えたのに、食べに来る人が誰もいないとは。

どうする?早速、クラスメイトの為に賄いでも作る?

すげー惨めなんだけど?

「まぁ、まだ開いたばっかりですから。お昼時になったら、少しは人、来てくれるんじゃないですか?」

と、乙無が切ないフォロー。

そうだと良いんだけど。

そもそも、文化祭がようやく始まったというのに。

旧校舎全体に、全然活気がないんだよな。

多分うちのクラスだけじゃなくて、男子部のクラスは何処もこんな感じだと思う。

無理もない。

文化祭始まったばかりなのに、わざわざ小汚い旧校舎に先に足を運ぶ物好きがいるかよ。

きっと今頃、新校舎の方は、活気に満ち溢れていることだろう。

…寿々花さん、どうしてんのかな…。

メイドカフェだって言ってたけど…。変な男に絡まれたりしてないよな…?

「まぁ、良いや。真珠兄さんの言う通りだ。昼時になったら、人も来るだろ」

と、雛堂は努めて楽観視を装った。

「それまで、トランプでもやって遊んでようぜ」

暇過ぎて、客が来るまで厨房でトランプ遊びをする店主と従業員。

大問題だろ、これ。

でも仕方ないじゃないか。誰もお客さんが来ないんだから。

まぁ、いっか。

そうこうしてたら来るだろう、お客さん。一人二人くらいは。

「じゃ、ババ抜きでもするかー」

「おぉ…」

「一枚のジョーカーを他人に押し付け合う…。まるで社会の縮図のようなゲームですね」

ろくでもないことを言うんじゃない、乙無。

自慢じゃないけど、俺、こう見えてトランプ遊びには慣れてるんだよ。

何せ、寿々花さんに何度も付き合わされてるからな。

だから、トランプにはちょっと自信があった…はずなのだが。
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