アンハッピー・ウエディング〜後編〜
寿々花さんが楽しそうで、それは何よりだけどさ。

でも、そういうことじゃないんだよ。

周囲の人間が、三ツ星レストランの料理の話をしているのに。

近所のコンビニで売ってる駄菓子が美味しくてー、なんて話をしたら顰蹙買うだろ?

そういうこと。

俺達男子部の生徒にとっては、充分思い出深い夏休みだったんだがな。

女子部の生徒にとっては、家での花火大会や誕生日会なんて、そんなつまらないものはなかろう。

「あんた…本当にそれで良いのか?」

「何が?凄く楽しかったよ。今までの夏休みで一番楽しかった。悠理君が居てくれたお陰だね」

あ、そう…。

そう言ってもらえると、俺は嬉しいけども…。

でも…本当にこのままで良いんだろうか?

「他の生徒は、海外旅行や留学に行って、貴重な体験をして一回りも二回りも成長してるんだろ?」

「ふぇ?」

「それなのに、うちの寿々花さんは何もしてない…。これって不味いんじゃないの?」

遊んでばっかの夏休みだっただろ。

別に、遊びまくっても全然問題ない成績だから、気にする必要はないのかもしれないけど。

でも、このまま遊び呆けて夏休みを終えても良いのだろうか。

「それじゃ、悠理君が私に宿題を出して良いよ」

と、寿々花さんが提案した。

…何だって?

俺が、寿々花さんに宿題を…?

「いや…。俺の方が遥かに成績低いのに、寿々花さんに宿題を出せる身分じゃねーよ」

「そんなの関係ないよ。悠理君の方が、私よりいっぱい色んなこと知ってるもん。りんご飴だって、たこ焼きだって作ってくれたでしょ?」

それは…。

それはそれだろ?俺に寿々花さんより得意なことがあるとしたら、料理くらいしかないからさ。

「悠理君、宿題頑張ってたから。私も宿題頑張る」

「…」

何故か、凄くやる気満々。

宿題…ねぇ。

寿々花さんに宿題…を、出すとしたら…そうだな。

折角寿々花さんがやる気を出してるんだし。

じゃあ、いっちょやってみるか。

「よし、分かった。じゃあやってみようぜ」

「うん!」

丁度俺の宿題も終わって、時間の余裕も出来たからな。

今度は、寿々花さんの「宿題」に付き合うことにしよう。
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