アンハッピー・ウエディング〜後編〜
…って言っても、宿題ってどんなことすれば良いんだ?

寿々花さんは頭が良いから、普通の…学校の科目の宿題を出しても、張り合いがないよな…。

そもそも俺、二年生の範囲なんてまだ分からないし。

女子部と男子部じゃ、カリキュラムも違うもんな…。

「寿々花さんは、どんな宿題をやりたい?」

本人に宿題を決めてもらうなんて、なかなか滑稽だな。

でも、本人がやりたいことの方がやる気出るだろ?

すると、寿々花さんは目をキラキラさせてこう言った。

「私、悠理君の出来ることが出来るようになりたい」

…はい?

「…どういう意味だよ?」

「悠理がいつもやってること、私も出来るようになりたい。お掃除とかお料理とかお買い物とか、何でも」

…マジで?

そう来たか…。

成程、確かに今の寿々花さんに欠けているのは、学校の勉強ではなく。

そういう、一般人が普段の生活で当たり前にこなしていることだな。

何せ、目玉焼きを爆発させるような人だからな。

「悠理君が得意なこと、私も得意になりたい。出来るかな?」

それは努力と才能に…応相談ってことで。

「気持ちは分かるけど…。あんた、お嬢様だろ?」

「ほぇ?」

「お嬢様なのに、家事やお使いが出来ても…」

そういうことは召使いに、もっと言えば…俺に任せておけば良いものを。

「何で?悠理君がやってること、私もやってみたい」

あ、そう…。

本当、変わったお嬢様だよ。

「駄目かな?私には出来ないかな?」

「いや、そんなことは…」

努力すれば、大抵のことは何でも…。

…と、思ったけど。

人間には、向き不向きってものがある。

危うく家庭科室を爆破しかけたり、家庭科の先生を気絶させたりする寿々花さんが。

今からいくら頑張ったところで、残り一週間ちょっとしか残っていない夏休みの間に、料理の腕前が上がるとは思えない。

勇気と無謀を履き違えるなよ。

ましてや最近の我が家は、例のインスタントラーメンのせいで、異臭騒ぎを何度も起こしてるからな。

下手に寿々花さんをキッチンに立たせて、夏休みの終わりにキッチンを破壊されたら…。

さすがの俺もへこむ。

ってな訳だから…料理は無理だな。料理以外で何か…。

じゃあ、掃除をやってもらうか?庭の掃除とか風呂掃除とか…。

いや待て。早まるな。

思い出せ、俺の誕生日の時。

廊下と階段を掃除しようとした寿々花さんが、バケツを引っくり返し。

そのバケツが、俺の脳天に直撃してコブを作ったことを。

…あれは嫌な思い出だったよ。

あれの再来は勘弁。

ってことは…残る選択肢は一つ、だな。
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