アンハッピー・ウエディング〜後編〜
寿々花さんと舞台袖で会って、話したことによって。
適度に、緊張がほぐれた。
聞くところによると、俺の出場順は、寿々花さんの次であるらしい。
誰かが仕組んだ罠かと思ったが、出場順はランダムのくじ引きで決まったそうなので。
ここでも、俺のくじ運の無さが遺憾なく発揮されているということだな。はいはい。
俺、人生で決して宝くじを買わないでおこうと思う。絶対に当たらないから。
いよいよ出場順が近づき、俺は寿々花さんと二人で舞台袖に向かった。
ステージの上では、男装した女子生徒が笑顔で客席に手を振っていた。
女装を強いられる男子生徒にとっては、苦行でしかないイベントだが。
男装する女子生徒達にとっては、楽しいイベント以外の何物でもないのだろう。
その証拠に、女子生徒達はステージに立ちながら、満面の笑み。超楽しそう。
対する男子生徒は、不格好なスカートを穿いて、死んだ魚の目でステージに立っていた。
この落差よ。
しかも、他人事じゃないんだぜ。これ。
俺もこれから、生け贄として皆の前に捧げられるんだよ。
あー。外、槍でも振ってこねーかなー。マジで。
客席だって、満員御礼で立ち見まで出てる始末。
一体何人のお客さんの前で、恥を晒されることになるのか。
しかし、緊張している俺の内心を笑うように。
刻一刻と、出場順が近づいてくる。
「それでは次、エントリーナンバー8番、無月院寿々花さん、どうぞー」
ステージの上で、司会者の女子生徒がマイクで寿々花さんを呼んだ。
俺の出場順は、寿々花さんの次。いよいよだな。
「じゃあ悠理君、行ってくるね」
舞台袖で、寿々花さんはくるりと俺に振り向いてそう言った。
寿々花さんには、全然緊張してる様子はない。羨ましいなぁ。
「はいはい。行ってらっしゃい」
俺も手を振ると、寿々花さんは頷いて、躊躇いなくステージに上がっていった。
途端に、ひときわ大きな拍手と歓声を浴びる寿々花さん。
そりゃそうだ。他にも、思い思いの格好で男装した女子生徒がいるが。
その中でも、寿々花さんは群を抜いて似合ってる…と、思う。
身内贔屓じゃないかって?…それはまぁ、あるかもしれないが。
そもそもあの人、元々の顔が良いからな。何着ても似合うよ。
俺より学ラン着こなしてくれて、学ランの方も本望だろう。
…少なくとも、元の持ち主の手を離れ、あろうことかむさ苦しい男の女装用衣装にされてしまった、小花衣先輩の従姉妹さんのセーラー服より、よっぽどマシ。
ごめんな、従姉妹さんのセーラー服。こんな小汚い男に着られる為に、この世に生まれて(?)きた訳じゃあるまいに。
本来の役目を終えて、大事にクローゼットにしまわれているはずが…。
こんな悪ふざけイベントの為に、まさか男に着られるとは思ってなかっただろう。
服に申し訳ないよ。
ステージの上で、楽しそうに手を振りながら練り歩く寿々花さんを眺め。
いよいよ。
「それでは次、エントリーナンバー9番。星見悠理さん、どうぞー」
…呼ばれちゃった。
ここまで来たら、もう逃げ帰ることは不可能。
じゃあな。覚悟を決めて…逝ってくる。
適度に、緊張がほぐれた。
聞くところによると、俺の出場順は、寿々花さんの次であるらしい。
誰かが仕組んだ罠かと思ったが、出場順はランダムのくじ引きで決まったそうなので。
ここでも、俺のくじ運の無さが遺憾なく発揮されているということだな。はいはい。
俺、人生で決して宝くじを買わないでおこうと思う。絶対に当たらないから。
いよいよ出場順が近づき、俺は寿々花さんと二人で舞台袖に向かった。
ステージの上では、男装した女子生徒が笑顔で客席に手を振っていた。
女装を強いられる男子生徒にとっては、苦行でしかないイベントだが。
男装する女子生徒達にとっては、楽しいイベント以外の何物でもないのだろう。
その証拠に、女子生徒達はステージに立ちながら、満面の笑み。超楽しそう。
対する男子生徒は、不格好なスカートを穿いて、死んだ魚の目でステージに立っていた。
この落差よ。
しかも、他人事じゃないんだぜ。これ。
俺もこれから、生け贄として皆の前に捧げられるんだよ。
あー。外、槍でも振ってこねーかなー。マジで。
客席だって、満員御礼で立ち見まで出てる始末。
一体何人のお客さんの前で、恥を晒されることになるのか。
しかし、緊張している俺の内心を笑うように。
刻一刻と、出場順が近づいてくる。
「それでは次、エントリーナンバー8番、無月院寿々花さん、どうぞー」
ステージの上で、司会者の女子生徒がマイクで寿々花さんを呼んだ。
俺の出場順は、寿々花さんの次。いよいよだな。
「じゃあ悠理君、行ってくるね」
舞台袖で、寿々花さんはくるりと俺に振り向いてそう言った。
寿々花さんには、全然緊張してる様子はない。羨ましいなぁ。
「はいはい。行ってらっしゃい」
俺も手を振ると、寿々花さんは頷いて、躊躇いなくステージに上がっていった。
途端に、ひときわ大きな拍手と歓声を浴びる寿々花さん。
そりゃそうだ。他にも、思い思いの格好で男装した女子生徒がいるが。
その中でも、寿々花さんは群を抜いて似合ってる…と、思う。
身内贔屓じゃないかって?…それはまぁ、あるかもしれないが。
そもそもあの人、元々の顔が良いからな。何着ても似合うよ。
俺より学ラン着こなしてくれて、学ランの方も本望だろう。
…少なくとも、元の持ち主の手を離れ、あろうことかむさ苦しい男の女装用衣装にされてしまった、小花衣先輩の従姉妹さんのセーラー服より、よっぽどマシ。
ごめんな、従姉妹さんのセーラー服。こんな小汚い男に着られる為に、この世に生まれて(?)きた訳じゃあるまいに。
本来の役目を終えて、大事にクローゼットにしまわれているはずが…。
こんな悪ふざけイベントの為に、まさか男に着られるとは思ってなかっただろう。
服に申し訳ないよ。
ステージの上で、楽しそうに手を振りながら練り歩く寿々花さんを眺め。
いよいよ。
「それでは次、エントリーナンバー9番。星見悠理さん、どうぞー」
…呼ばれちゃった。
ここまで来たら、もう逃げ帰ることは不可能。
じゃあな。覚悟を決めて…逝ってくる。