アンハッピー・ウエディング〜後編〜
そこから先のことは、正直…思い出したくない。

ステージに立って、超絶不名誉な拍手喝采を浴びている間。

俺の脳みそは、記憶することを拒絶したかのように機能停止していた。

こんな黒歴史、速攻なかったことにして忘れようぜ。

ステージに立っているのは、ほんの一分足らずの短い出来事だったにも関わらず。

俺にとっては、永遠のように長い時間に感じられた。

恥辱の時間を終えて、舞台袖に帰ってくると。

先に戻っていた寿々花さんが、そこで待っていてくれた。

しかも、妙に興奮した様子で。

「お帰り、悠理君。凄かったねー。皆歓声あげてたよ」

そうか。

人の恥を晒した姿を見て、やんやの歓声をあげるとは。

悪趣味な奴らがいたもんだ。

…ともあれ、これで受難の時は終わった。

急いで控え室に戻って、このセーラー服を脱いで化粧を落とし、忌まわしいカツラを放り投げたい。

あとはもう、家に帰って全部忘れて寝ようぜ。

本当に、実に長い一日だった…。




…と、思ったが、俺は分かっていなかった。

俺の受難の時は、まだ終わっていないのだということを。

ステージの上で、司会者が楽しそうにマイクを持って言った。

「それではこれより、予選を勝ち抜き、決勝戦へ駒を進めた出場者を発表しまーす」

…。

…は?

この時の俺は、最高に間抜けな顔をしていたに違いない。
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