アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「審査員の厳正なる審査の結果、決勝戦に選ばれたのは、まずエントリーナンバー2番…」

俺がポカンとしている間に、決勝戦へ駒を進めた出場者の発表が続けられていた。

…は?決勝戦?

何それ?聞いてない。

「次に、エントリーナンバー8番、無月院寿々花さん」

「あ、私呼ばれちゃったー」

マジ?寿々花さん決勝に出るの?

つーか決勝戦って何なの?あれ?一回前に出て恥を晒して、それで終わりじゃねーの?

決勝戦があるなんて聞いてない。

いや待て。呼ばれなければ良いんだよ。予選落ちを目指せ。

出場者も観客も、女子生徒ばかりなんだから。

小汚い男子生徒の女装姿なんて、もう見たくないだろ?

決勝戦は、女子生徒だけでやれよ。男子生徒はもう解放してく、

「最後に、エントリーナンバー9番、星見悠理さん。以上が、決勝に進む5名となりまーす」

現実は非情である。

目の前が真っ暗になる、とはこのことを言うのだと思った。

思わず、くらくらと目眩がして倒れそうになった。

「あ、悠理君も決勝戦に出られるって。やったー、おめでとう」

何がおめでたいんですか?

地獄の延長戦、確定。

しかも、三人の男子生徒のうち、決勝に選ばれたのは俺だけ。

残る二人の男子生徒は、予選落ちで解放されていた。

彼らの、心底ホッとしたような顔。

あまりに恨めしくて、飛び掛かりたくなった。

嘘だろ?俺だけ延長戦?

何で俺だけがそんな恐ろしい目に?

「それでは、選ばれた5名の出場者の皆さんは、衣装替えをして、一時間後に舞台に戻ってきてください」

この司会者さん、さっきから良い笑顔でとんでもないことを言いやがる。

衣装替えって何なんだよ。

「ではそれまで、有志の方々の発表を始めまーす」

もう決勝戦の話は終わり、とばかりに。

決勝戦までの間を繋ぐ為に、有志の生徒達がステージに上がって、歌や踊り、楽器の発表を披露し始めた。

…で、俺はこれからどうしたら良いの?

全てを忘れて、何もかもなかったことにして帰っても良いだろうか。
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