アンハッピー・ウエディング〜後編〜
俺の名誉の為に言っておくけどさ。

これでも、一応抵抗はしたんだぞ。激しく。

セーラー服の次はメイド服なんて、そういう趣味をお持ちの方でもハードル高いだろ。

ましてや、全くそういう趣味のない俺にとっては、拷問も同然。

絶対嫌だ、冗談じゃない、勇気?度胸?知ったことか。プライドの方が大事だ。

必死にそう主張したのだが。

寿々花さんは、俺が何をそんなに嫌がっているのか、全く分かっていないかのように。

きょとんと首を傾げて、一言。

「何で?悠理君なら、きっと似合うよ」

惚けた顔でそう言われてしまったら、こちらとしてはもう何も言い返す言葉がない。

…似合うかどうかなんて、この際どうでも良いんだけど?

嫌だって言ってるのに、寿々花さんは自分の教室から、Lサイズのメイド服を借りてきて。

嫌だって言ってるのに、俺は無理矢理その服を着せられた。

俺の必死の抵抗を嘲笑うかのように、雛堂と乙無は、

「はいはい分かったから。お着替えしましょうねー」

「早く着替えてくださいよ。メイク直しする時間がなくなるでしょう」

と、まるで俺が我儘を言う駄々っ子のような扱い。

非常に理不尽極まりない。

その間に、寿々花さんはけろっとした様子で、俺の制服を身に着けていた。

こうして、一時間の制限時間内に、決勝戦の準備が整ってしまった。

「よし、悠理姉さん。頑張ってこいよー」

「やるなら、いっそ優勝を目指してくださいね」

と、呑気に手を振る、薄情な友人二人と。

「一緒に頑張ろうね、悠理君」

と、何故か妙に張り切っていて、ついでに妙に俺の制服が似合っている寿々花さんに、エールを送られた。

とりあえず、雛堂と乙無とは、明日から付き合い方を考えさせてもらうことにするよ。

そうして、始まってしまった女装・男装コンテスト決勝戦。

俺は、もう緊張も何処へやら、ひたすら頭の中を無にしてステージに立った。

拝啓、ご先祖様。

あなた方の末裔が、このような情けない姿を人前に晒すことをお許し(ry。
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