アンハッピー・ウエディング〜後編〜
帰り道の途中で、クリーニング屋に寄って。

コンテストで着た衣装を預けてきた。

セーラー服はともかく、メイド服は恥ずかしかった。

俺が持ってきたそれらのを服を見た、クリーニング屋のおばさんの顔。

「この子…もしかして、あっ…!」みたいな顔をしていらっしゃった。

違うから。それ誤解だから。俺の趣味じゃないから。

誤解しているに違いないおばさんに、全力で否定したかったが。

しかし、そんなことをする元気もなく。

思考を放棄した俺は、「じゃ、お願いします…」とだけ言って、そのまま帰宅。

俺としては一刻も早く、今日の思い出を…特に、午後からの思い出を…頭の中から消去して、忘れてしまいたかったのだが…。





「えへへ。今日楽しかったねー、悠理君」

「…そうか…」

寿々花さんの方は、帰ってからも興奮冷めやらない様子で、にっこにこだった。

良かったな。

あんたが嬉しそうで何よりだよ。…俺にとってはトラウマ級の黒歴史だけどな。

「来年も頑張ろうね、悠理君。今度は悠理君に負けちゃうかもなー」

何でどいつもこいつも、来年も俺がコンテストに出る前提なの?

出ねーっつーの。

…でも、寿々花さんがあんまり嬉しそうだし、それに俺も、言い合いするほど体力残ってないし。

「…そうだな…」

死んだ魚の遠い目で、そう呟くのが精一杯だった。

今日一日だけで、色んなことが盛り沢山だよ。

色々な意味で、忘れられない文化祭の思い出になりそうだ。
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