アンハッピー・ウエディング〜後編〜
だが、間抜け顔して誤魔化そうとしたって無駄だぞ。

俺は聞いてたからな。さっきのあんたの替え歌。

「ハロウィンに、何をするつもりだって?」

「え?」

「今歌ってただろ」

聞き捨てならないことを言ってたよな?

「悠理君が魔女の服を着て、ご機嫌になるって…」

「違う、そっちじゃない。2番じゃなくて1番だ」

「1番…?どんな歌詞だったっけ?」

覚えてないのかよ。

まさか、適当なのか?適当に思いついた歌詞で歌ってるだけなのか?

良いよ。あんたが忘れてんなら、俺が思い出させてやる。

「ハロウィンにお菓子を食べて、俺に悪戯するって言ってたぞ」

「!そうだった。悠理君にトリックオアトリートするんだった」

やっぱり、思い出させずに忘れさせておくべきだったかな。

余計な地雷を踏んでしまった気がする。

「…ちなみに、悪戯って何をやるんだ?」

「うーんとね。玄関に生卵をぶん投げて、ティッシュペーパーをぶち撒ける」

大罪人。

卵が勿体無いだろ。鶏さんに謝れ。

冗談じゃないぞ。そんな悪質な悪戯。

「お菓子くれなかったから」で済まされるレベルではない。

こうなったら、ハロウィン当日に備えて、しこたまおやつを買い込んでおこう。

悪戯される隙を作らず、お菓子を与え続けることにしよう。

「楽しみだねー、ハロウィン。今年は悠理君がいるから、とっても楽しみだ」

「…あ、そう…」

…何すんの?ハロウィンって。

俺にとってはハロウィンというイベントは、スーパーにハロウィンパッケージのお菓子が並んでいたり。

前述の通り、野菜売り場に大きなかぼちゃが売っている…程度の認識に過ぎなかったのだが。

皆、ハロウィンってなんか、特別なことでもすんの?

俺に悪戯でも企んでんのか。

「悠理君、私もいっぱいお菓子、用意しておくからね。たくさん」

「そ、そうか」

子供舌な寿々花さんにとっては、お菓子のやり取りをする日というだけで、いかにも楽しそうに見えるのかも。

子供のイベントだもんな。ハロウィンって。

「うんまい棒、100本くらい買っておくから」

「他のお菓子も買ってくれよ…」

何でうんまい棒限定なんだ。

好きなのか?そうなのか?

「全部、かぼちゃさつま芋味のうんまい棒だよ」

「他の味も買ってくれよ…」

何で100本全部同じ味なんだよ。飽きるだろ。

つーか、かぼちゃさつま芋味…?どっち…?

それ、かぼちゃ味とさつま芋味の二種類に分けた方が美味いのでは…?

…よく分かんねぇけど。

文化祭が終わったら今度は、ハロウィンが待ち遠しいってことね。

次から次へと、忙しない奴だよ。
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