アンハッピー・ウエディング〜後編〜
翌日、俺は雛堂と乙無に、寿々花さんがハロウィンパーティーの開催を希望している旨を伝えた。 

これには、雛堂も満面笑みで、

「そう来なくっちゃな!」

とのこと。

「そんじゃ、悠理兄さん。パーティーで食べるケーキについては任せた」

ポン、と俺の肩に手を置く雛堂。

…は?

「自分は仮装の準備と、飾り付けもどうすっか考えないとなー。なぁ、真珠兄さん」

「飾り付けって…。一応人の家ですからね?勝手に飾り付けるのはどうなんですか」

「いやいや、必要だろ?特にかぼちゃ。ほら、あの中身をくり抜いたかぼちゃ」

「ジャックオーランタンのことですか」

「そう、それそれ!」

俺の存在を無視して、勝手に話を進めてやがる。

おい、ふざけんなよ。ケーキって何なんだよ。

呑気にジャックオーランタンの話なんかしてる場合か?

「家庭でジャックオーランタンを手作りするのは、なかなか骨の折れる作業なのでは?」

「でも、あれがないとハロウィンって感じしなくね?ここはあれだろ。邪神の眷属パワーで何とかならね?」

「…あなたという人は、邪神の眷属を便利屋だとでも思ってませんか?我々は、邪神イングレア様より神血を賜った、崇高なる…」

「神様なら、かぼちゃの中身くり抜くくらい余裕だろ?そんなことも出来ない神様が威張ってんの?」

雛堂に煽られ、乙無は顔色を変えた。

「失礼な。その程度のこと、赤子の手を捻るより容易いことです」

「そんじゃ、ジャックオーランタンの準備は真珠兄さんに任せた。宜しくー」

「良いでしょう。目にもの見せてあげますよ」

…乙無、気付けよ。

あんた、雛堂に良いようにハメられてんぞ。

こうして、雛堂の下手くそな術策にハマっていくんだなぁ…。…俺も人のこと言えないけど。

ふざけんな、と言ってやりたいのは山々だったが。

ハロウィンパーティーを、心底楽しみにしていた寿々花さんの顔を思い出すと。

…。

…うん。

…仕方ない。ハロウィンケーキの作り方、ネットで調べてみるか…。
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