アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「な?ハロウィンパーティーは帰ってからやろう。だから、修学旅行楽しんでこいよ」

「…悠理君…」

…あと、そんな泣きそうな顔をするのやめてくれ。

「ありがとう。…悠理君はやっぱり優しいね」

「大したことじゃねぇよ」

「悠理君の、そういうところが凄く大好き」

はいはい。そりゃどうも。

…って、それよりも。

「…あんた、修学旅行の準備はしてんのか?」

「…ふぇ?」

ふぇ、じゃなくてさ…。

この様子だと、全然何の支度もしてないな。

呑気過ぎるだろ…。修学旅行の準備って、何週間も前から始めておくものじゃないのか?

あ、でも行き先にもよるか…。

近場の国内旅行だったら、持っていくものもそんなに…。

…いや、待て。冷静に考えろ。

何せ聖青薔薇学園は、入学オリエンテーションで京都旅行に行き。

遠足と称して、日帰り豪華客船クルーズに行くような学校なんだぞ。

そんな学校の修学旅行が、近場の国内旅行な訳ないだろ。

きっと海外に違いない。何処だろう。…ハワイとか?

「寿々花さん…つかぬことを聞くが」

「?なーに?」

「修学旅行の行き先って、何処なんだ…?」

「えーっと…。…確か、私は…何処だったかな」

忘れるなよ。修学旅行の行き先を。

寿々花さんは、学生カバンをごそごそと漁り始めた。

そこから出てきた何枚かのプリントを見て、

「あ、そうだ。私はイタリアに行きたいって言ったんだった」

イタリアだってよ。

ハワイではなかったが、これだってめちゃくちゃ豪華だろ。

イタリアっつったら…パスタだよなぁ。

美味しそうなものがたくさんありそうだ。

しかし寿々花さん、今…ちょっと気になることを言わなかったか?

私「は」…って言った?言ったよな?

…どういう意味?

頭の中で、首を傾げていると。

「フランスはお姉様から色々聞いてて知ってるし、イギリスには円城寺君が居るから、何となく行きたくないし…」

「…」

「ドイツでも良いかなぁとは思ったけど、ドイツ語が分かんないから。イタリア語なら、ちょっとは喋れるから。やっぱりイタリアにしようかなって思ったんだった」

マジ?寿々花さん、イタリア語なんか喋れんの?

すげーな。英語もペラペラだし、フランス語も分かるんだよな?

おまけにイタリア語って…。

俺の知ってるイタリア語って言ったら…ボンジョルノー、くらいしか知らない…。

寿々花さんは、世界の何処に放り出されても、無事に帰ってきそうだな。

一方俺は…ジェスチャーで意思疎通するしかないな。

こういうとき、寿々花さんってお嬢様育ちなんだなーって思う…。
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