アンハッピー・ウエディング〜後編〜
…寿々花さんが意気揚々とお使いに出掛けた…のは良いんだけど。

ますます不安が募る。

だって、あの世間知らずのお嬢様だぞ?

生まれてこの方、一度として近所のスーパーで買い物なんてしたことない人が。

果たして、いきなりお使いを成功させられるのだろうか。

いくら家で練習したとはいっても、あれはあくまでおままごとの延長。

本物の買い物とは訳が違う。

予期せぬトラブルに見舞われることもあるだろう。

…予期せぬトラブルって何だろう?…変な人に声かけられる、とか?

有り得る。あの人、中身はともかく見た目だけは良いから。中身はともかく。

おまけにうっかり者だしな。

…お金を払い忘れて、カゴ持ったまま店の外に出ちゃった…とか。 

いかにもやりそうじゃないか?

ナチュラル万引きじゃないか。

どう説明すれば良いんだ?お店の人に。万引きじゃないんです、ただのうっかり者なんです、初めてのお使いだったんです、って訴えるか?

…想像しただけで修羅場。

そもそもあの人、ちゃんとスーパーまで辿り着いてるんだろうか?

うっかり道に迷って、街中を彷徨ったりしてないよな?

変な人に声をかけられて、迂闊についていったりしてないよな?

…やべぇ。考えれば考えるほど、不安が募る。

「…」

…俺は、すっくとソファから立ち上がった。

黙って帰ってくるのを待ってるなんて、やっぱり出来ない。

大体、寿々花お嬢さんに何かあったら、それは俺の責任になるんだからな。

後で俺が責任を追及される…なんてことにならない為にも。

俺は急いで家を出て、お使いに出た寿々花さんを追いかけることにした。
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