アンハッピー・ウエディング〜後編〜
それから数日。

あれよあれよという間に、時が過ぎ。

いよいよ、寿々花さんの修学旅行の日がやって来た。

朝、いつも通りご飯と味噌汁と糠漬け、という朝食を一緒に食べた。

海外に発つ前に、しっかり和食を食べていってくれ。

「しばらくの間、悠理君のご飯食べられなくなるのかー…」

修学旅行の朝、なのに。

大はしゃぎしていて良いはずなのに、寿々花さんはむしろ、憂鬱そうな表情だった。

あんたな…豪華イタリア旅行だぞ?

しかも、飛行機は行き帰り共にファーストクラスだそうだ。

誰もが羨む、超豪華ヨーロッパ旅行なのに。

「帰ってきたら、また嫌でも毎日俺の手料理を食べることになるんだから、たまには美味しい本場のイタリア料理を楽しんでこいよ」

イタリア料理って、美味しいだろ?

俺も一度、本場の味を食べてみたいものだよ。

でも多分、凡人の俺は、生涯一度もヨーロッパの大地を踏むことは出来ないだろうからさ。

俺の分まで楽しんできてくれ。

「でも、イタリア料理なんかより、悠理君のご飯の方が美味しいもん」

成程。そう言ってくれてありがとうな。

とりあえず、あんたはイタリア人に謝れ。

「分かった、分かった。帰ってきたら特大のオムライス用意して待ってるから」

「…!本当?」

「あぁ。ちゃんと国旗も立てておくよ」

帰国祝いで、威勢良くオムライスの上に日の丸国旗を立てておこう。

「だから、旅行楽しんでこいよ」

「うん、分かった…。ありがとう、悠理君」

修学旅行なんて、学生生活で一度きりなんだからな。

ちゃんと楽しまないと損だぞ。



…そして。

「…そろそろ行かなきゃ」

朝食の後、寿々花さんはいつもより早めに、家を出ることになった。

いよいよ、である。
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