アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「な、何だよ?今授業中…」

「…」

乙無が、スッと時計を指差した。

釣られて時計に目をやると、既に授業は終わっており。

いつの間にか、放課後になっていた。

…なぁ。マジで今日チャイム鳴った?

壊れてんじゃねーの。

「い、いつの間に…」

「チャイム鳴ってんのに、悠理兄さんがシャーペン持って固まってるから、隣の席の奴がビビってたぞ」

それはごめん。

違うんだよ。俺は別に…その。

「…明日の夕飯の献立を考えただけだよ」

「ふーん。で、明日の晩飯何にすんの?」

「…納豆ご飯かな…」

「…そんだけ考えて、納豆ご飯かよ」

良いじゃん、納豆ご飯。美味いだろ。

キムチを乗せたら更に幸せ。

あぁ、でも寿々花さんは子供舌だから、あんまり辛いものは食べられな、

…って、だから明日の夕飯にも寿々花さんはいないんだって。

「…しょうがないだろ。授業がつまんないのが悪い」

「まぁ、それは同感だな」

「今日一日、ほぼ自習でしたもんね」

そう。本日の授業、実質午前中の一コマだけだった。

他の時間は、ずーっと自習。

お陰でクラスメイト皆、白けてきたのか、途中から勉強するのやめてた。

隣の席の奴と喋ったり、机に突っ伏して昼寝したり。

何でそんなことになったのかというと、学校に先生がいないからである。

どういうことだ、って?

簡単な話だ。…学校中のほとんどの先生が、修学旅行の引率としてついていっちゃったもんだから。

学校にいないどころか、日本にもいないんだよ。

そりゃあ4コースもあったら、それぞれのコースに最低でも5、6人くらいは引率の先生が必要だろうよ。

従って、現在学校に残っている先生の数が相当減ってしまっている。

それでも、勿論残された女子生徒達を放置しておく訳にはいかない。 

元々は旧校舎の男子部担当だった先生達も、今だけは優先的に新校舎の応援に行ってしまった。

結果、旧校舎の中には、常駐している先生が三人未満。という異例の事態が発生している。

授業が自習だらけなのもそのせいだ。

分かる分かる。女子部の授業が優先だもんな。俺達は黙って自習でもしとけってことな。はいはい。

ちょっと、男子生徒全員で徒党を組んで、職員室占拠しに行かないか?

抗議デモだ。

今なら先生の数も少ないし、イケるだろう。

小学校の時、誰しも一度は考えなかったか?…クラスメイトと一緒に、職員室に押し掛けて占拠するの。

俺は考えたことないけどな。あまりに荒唐無稽過ぎて。

でも、今ならそれも夢ではない。

…まぁ、占拠したところで何のメリットもないから、やらないけど。
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