アンハッピー・ウエディング〜後編〜
やれやれ。何考えてるんだか。

良いじゃん、別に。いつもは喧しいくらいなんだから、俺だってたまには静かに過ごしたい。

その方が、家事も捗るってもの、

「…あっ」

その時、俺は気がついた。

さっきの、コンビニでの買い物。

弁当も肉まんもアイスクリームも、どれも二個ずつ買ってきてしまったことに、今更気がついた。

…おそっ。

そうだった。…寿々花さんの分は要らないんだった。

だって今頃あの人は、イタリアに向かう飛行機の中で優雅に…。

…つい、いつもの癖で…何でも二人分買ってきてしまった。

あんまんと肉まんどっちが良いか聞こうと思って…二つも…。

…居ないっつーの。何やってんだよ、俺は…。

一人分だったら、半額で済んだのに…。

仕方ないから、寿々花さんの為に買ってきた分は、冷蔵庫に入れて明日食べよう…かと思ったが。

ヤケクソのように、八つ当たりでもするかのように。

俺はあんまんと肉まんを一気食いして、お弁当二人分を無理矢理口の中に押し込んだ。

ついでにアイスクリームも二つ…と思ったけど、さすがにそれ以上は食べられなかった。

アイスクリームは、冷凍庫に入れて保管しておこう。

食事が終わる頃には、既に外は暗くなっていた。

どんなに外が暗くなっても、時間が遅くなっても…この家に帰ってくる者はいない。

なんか、無駄に静かだな…。変な感じ。

暇潰しにとテレビをつけてみたが、画面に映るのは馬鹿馬鹿しいバラエティ番組。

芸人がおどけたギャグを披露して、スタジオがどっと笑い声をあげるのを聞き。

無性にイラッとして、そのままテレビのスイッチを切ってやった。

くっそつまんねぇ番組ばっかやりやがって。

いっそ、寿々花さんのホラー映画DVDでも借りて観ようか。

と思ったけど、そんなことをしたら夢に出てきそうだったから、さすがにそれはやめておいた。

…あぁ、何だか腹の中がもやもやするような、落ち着かない気分だ。

中華まんとお弁当を二つも食べたからだろう。きっと。

寝よう。今日はもう、さっさと寝ることにするよ。
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