アンハッピー・ウエディング〜後編〜
驚いて、急いで玄関に向かって扉を開けると。

そこには。

「やっほー。悠理兄さん。遊びに来たよー」

「どうも、悠理さん」

私服姿の、雛堂と乙無が立っていた。

…ふーん。

「…なんだ、あんたらか…」

「なんだって何だよ。お客様に対して失礼じゃねぇの?」

一体何を期待してたんだか。この家を訪ねてくる人なんて、こいつらと円城寺くらいしかいねーよ。

「…で、何?何しに来たんだ?」

「寿々花さんがいなくて、一日を無駄に浪費していることだろうと思って、来てあげたんじゃないですか」

何だと?

「別に、余計なお世話だ」

「へぇ?ついさっきも、『今頃イタリア料理食べてるかな…』とか考えてたんじゃないですか?悠理さんのことですから」

ぎくっ…。

…あんた、何でいつもそんなに的確に俺の考えてることが分かるんだ?

心でも読んでる?

それとも、俺はそんなに分かりやすいってことなのか…?

「一人でいたら、余計気が滅入るでしょう?」

「それは…その…」

「ま、自分らじゃ無月院の姉さんのかわりにはなれんけど、暇潰しくらいにはなるだろ」

と、雛堂。

…この二人なりに、俺に気を遣ってくれているということなのかもしれない。

俺、そんなに寂しん坊に見えてんの?

「気分を晴らすには、カラオケが一番!ってことで、今からカラオケ行こうぜ。悠理兄さん」

「お土産にシュークリーム買ってきたので、一緒に食べましょう」

マジで?そんないきなり外出に誘ってくんの?

「いや、そんな…いきなり…」

「どうせ暇だろ?何もしてなかったんだろ?良いじゃん」

「…確かに否定は出来ないけど、あんたに言われるとムカつくな」

やるべきことはあるんだよ。いくらでも。

家事とか買い物とか。授業の予習…は、しばらく授業がないから意味ないけど…。

予習が駄目なら、復習とか…。

でも、やる気がないからやらなかっただけで…。

…とはいえ、気晴らしに誘ってくれる、その気遣いは有り難かった。

一人で家にいても、気が滅入るばかりだったから。

雛堂達といれば、少しは余計なこと考えずに済むかも。

「…分かった。行くよ」

「よーし。そう来なくちゃ!」

たまには、こんな風に休日を過ごすのも悪くないだろう。
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