アンハッピー・ウエディング〜後編〜
聖青薔薇学園旧校舎男子部では、現在新校舎女子部の修学旅行の引率の為、先生の数が激減している。

相変わらず、まともに授業が出来る状態ではない。

だったら休校にしてくれよ、と雛堂は盛んに愚痴っていて。

俺も、自習ばっかりじゃ余計なことばっかり考えてしまうから、いっそ休校にしてくれれば良いのになぁ…と。

思っていた、矢先のこと。

その日の一時間目は、体育だった。

特別に、新校舎の体育の先生がやって来てくれるそうだ。

そこで俺達は体操服を着せられて、校庭に集合。

そこには、俺達一年生だけではなく。

二年生と三年生の先輩達も、つまり男子部の全校生徒が揃っていた。

…と言っても、男子部は一学年の人数が少ないから、全校生徒を合わせても、女子部のひとクラス程度の人数にしかならないけどな。

朝っぱらから、男子部の生徒を勢揃いさせて、何をさせるつもりだ?

…この時点で、若干嫌な予感はしていた。

「あー、さみぃ…」

校庭に並べられた俺達は、肌寒さに震えていた。

「11月が来ようかっていうのに、何で半袖なんだよ?」

余程寒いのだろう、露出した両腕をしきりに擦りながら、雛堂が言った。

…それを言うなよ。余計寒くなるだろ。

「仕方ないだろ…。半袖で来い、って指示なんだから」

普段の体育の授業なら、半袖シャツの上に長袖ジャージの着用を許されている。

だが、今日は「全員半袖で来ること」という指示があった。

何故半袖限定なのか、その理由については何の説明もなかった。

従って俺達は、理由が分からずに首を傾げながらも、指示通り半袖で校庭に集まった。

お陰で、超寒い。

運の悪いことに、今日に限って強く冷たい風が吹いていて。

一足早く、冬がやって来たかのようだった。

寒っ…。

俺達だけじゃなくて、他の男子生徒質もぶるぶる震えながら、剥き出しの両腕を擦っていた。

こんな寒い日に屋外で体育とか、冗談だろ。

生徒の数少ないんだから、体育館使わせてくれよ。

…それなのに、そんな俺達を見て。

「だらしない人達ですね、全く」

「…乙無…」

乙無だけは、指示を無視して長袖ジャージを着ていた。

…そりゃあんたは温かいだろうよ。長袖着てるんだから。

「何で上着着てんだよ。脱げって言われたじゃん」

「ふっ、愚かな。何度も言わせないでください。僕は太陽のもとに素肌を晒してしまうと、抑え切れない邪なる力の衝動が…」

あーはいはい。いつものね、いつもの。

全く付き合ってられねぇよ。

「しっかし、わざわざ全校生徒集めて何させるつもりなんだろうな…?」

「…さぁ…」

分からないな。…分からないから恐ろしいんだが。

てっきり、今日もほぼ一日自習なんだと思ってたのに。

意外なことに、体育の先生がわざわざ新校舎から来るとは。

一体何をさせられるのか、不安が募る。

そこに、遅れ馳せながら、新校舎の体育の先生がやって来た。

新校舎の先生なんだから、見覚えがないのは当たり前だが…女の先生だった。
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