アンハッピー・ウエディング〜後編〜
これには、俺を含め、男子部の生徒達は口をあんぐりと開けて、二の句が継げなかった。

平然としているのは、乙無くらいだよ。

…このクールビューティー体育教師、何言ってんの?

頭おかしくなったか?

「コースはこちらになります。旧校舎から出て新校舎に回って、門を出て真っ直ぐ…角にある公園まで行って、そこをUターンして…」

俺達がポカンとしているのも構わず。

クールビューティー体育教師は、マラソンとやらのコースを説明していた。

「○○交番と、その先の郵便局の前を通って、また新校舎から旧校舎に戻ってきて、グラウンドを一周。それを10回繰り返してください」

10回って、頭おかしいんじゃねぇの?

何キロっつった?マラソン…。20キロって言った?

ここ、ハーフマラソン大会の会場だっけ?

「余裕のある人はもう一周して11回走ったら、大体ハーフマラソンと同じ距離になりますよー」

なりますよー、じゃないんだよ。

ド素人の俺達に、いきなりマラソン中級者みたいな距離を走らせるつもりか。

なんてことだ。

新校舎から、わざわざ体育の先生が来てくれて。

珍しいことがあるもんだと思ってたら、蓋を開けてみればこの仕打ち。

要するに、「お前らなんか、ひたすら走っとけ」って言われてるようなもんだからな。

男共なんか、適当に走らせとけば良いだろうって?

あんた、これが女子部の生徒相手だったら同じことが言えたのか?なぁ。

どうせ女子部の生徒は、今頃違うことしてんだろ。

同じ体育でも、お嬢様達は体育館の中で、遊雅にソフトバレーボールでやってんだろ。

「キツかったら、途中で少し歩いても良いいですよ。タイムを気にする必要もないので、出来るだけ走りながら、午前中までに帰ってきてください」

それで譲歩しているつもりか。

例え歩いたとしても、いきなり20キロはキツいだろ。

午前中までに…帰ってこられるのか?俺達は…。

途方もない距離のような気がするんだけど。

しかも、このクールビューティー体育教師。

「じゃ、私は女子生徒達の体育の授業も見なきゃいけないので、新校舎に帰りますね」

俺達を走らせておいて、自分は新校舎に帰るらしい。

おい。無責任かよ。

「ちょくちょく様子を見に来るので、皆さんサボらずにちゃんと走ってください」

むしろ、あんたがサボってんじゃん。俺達の監督をサボってる。

「それじゃ、気をつけて走ってくださいね。くれぐれも近隣の方々に迷惑をかけないように」

と、言いたいことだけ一方的に言ってから。

クールビューティー体育教師は、俺達を置き去りにして新校舎に帰ってしまった。
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