アンハッピー・ウエディング〜後編〜
帰宅数時間後。

「…はー…」

急須で熱いお茶を淹れて、湯呑みをずずず、と啜る。

多分今、我ながら超ジジ臭い姿を晒してると思うが。

誰も見てないからセーフ。

一人万歳。

這うようにして家に帰って、汗まみれの服を脱ぎ捨ててシャワーを浴び。

お陰でちょっとホッとしたので、夕食を用意する為にキッチンに立つ気力が戻った。

とはいえ、当然手の込んだ料理を作る体力まではないので。

少し考えた結果、冷凍していたうどん玉と、冷蔵庫に残っていた塩蔵わかめを使って、わかめうどんを作った。

うどんの出汁(粉末)が、五臓六腑に染み渡る。

食べ終わったら食器を片付けて、食後のお茶を淹れて、こうしてソファに座ってお茶を啜っている。

やっと一息ついた…って感じだな。

すげー疲れた。マジで。

このままソファに横になって、寝てしまおうかなぁと思うくらい。

いや、さすがにこんなところで寝たら、風邪引きそうだから…不味いか。

でもちょっと、うたた寝するくらいなら…許されるのでは?

ずずず、とお茶を啜って、そのまま睡魔に身を委ねて、重い目蓋を閉じそうになった…。

…その時だった。

突然、家の電話が鳴り始めて、俺はビクッとして飛び起きた。

やべ、ちょ、お茶溢れた。

慌ててティッシュペーパーで、溢れたお茶を拭く。

その間にも、電話は鳴り続けている。

俺は急いで立ち上がって、電話機の方に向かった。

なんか、早くも両脚がじわじわ痛い気がするんだが。

これ、筋肉痛の予兆?

なんて、考えるのは後回しである。先に電話に出なければ。

誰だ?こんな時に、こんな時間に。

これでもしセールスだったら、「疲れてんのに、二度と掛けてくんな!」と逆ギレするところだったが。

「はいっ…もしもしっ…」

『あ、悠理君だ。やったー、良かったー』

電話の向こうから聞こえてきた声に、俺は思わず心臓が止まりそうになった。

…電話越しでも分かる、この間の抜けた呑気そうな声。

その声の持ち主を、俺は一人しか知らない。

「す…寿々花さん、か?」

『うん、そうだよー』

…やっぱり。

数日ぶりに電話越しで聞く、寿々花さんの声だった。
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