アンハッピー・ウエディング〜後編〜
『寝る前に電話しちゃってごめんね』

「いや、別に…」

『実は家の電話の番号が分からなくて、思い当たる電話番号に色々掛けてたんだー』

おい。自宅の電話番号くらい覚えてろよ。

『何件か、違うお家に間違い電話しちゃった』

「お、おいおい…。それ、ちゃんと謝ったか?」

『えぇっと…確か一軒目は、「本日の営業は終了しました」って自動音声言われて…』

それ、何処の飲食店に電話したんだ?

『二軒目はいきなり、「しつこいわね!アンタとはもう口利かないって言ってんでしょっ!」っておばさんの声に怒られて、そのまま切られた』

それ、何処の修羅場夫婦の家に電話したんだ?

ご主人、ごめんなさい。

『三軒目は、「はぁ、はぁ。あなたからの電話、ずっと待ってたわ…♡」って言われて』

それ、何処のテレク(ry。

『悠理君かなーと思ってそのまま離してたんだけど、段々と変な水音が、』

「ちょ、待てそれ以上言うな」

話が。話がR18になってしまう。

つーか、何でそれを俺だと思ったんだよ…!?

『しばらく聞いてたんだけど、もしかして悠理君じゃないのかもしれないと思って。「悠理君ですか?」って聞いたら違うって言うから』

「…第一声で気づいてくれよ…」

『秘めたる本性を現した悠理君かと思って…』

あんた、俺を何だと思ってるんだ?

何も秘めてねーよ。

『大丈夫だよ。私、悠理君がどんな秘密を隠してても、軽蔑したりしないから』

「ありがとうな。でも何の秘密も隠してないから」

『四軒目でようやく、悠理君に繋がったんだー』

家に帰ったらまず、あんたには自宅の電話番号を叩き込んでやるよ。

とんでもないところに間違い電話しやがって。

本当、危なっかしいと言うか何と言うか…。

そんなんで海外旅行して、大丈夫なのかと心配になってくる。

「…引率の先生やクラスメイトに、迷惑かけてないだろうな?」

『うん、だいじょうぶー』

「現地の人にも迷惑かけてないよな?変なもの食べて体調崩したりしてないか」

『カタツムリ食べたよー』

「カタツムリ…!?」

…あ、エスカルゴか。

…エスカルゴってフランスじゃね?

『チーズがいっぱいあってね、カビのチーズとかねー』

カビのチーズ…ゴルゴンゾーラチーズって奴か?

俺は食べたことないけど。

『えーっと、ぱるめじゃれじゃーのって名前のチーズとかねー』

…ほぼ言えてない気がするが、語感的にパルミジャーノレッジャーノって奴か?

『牛さんじゃなくて、羊さんのチーズも食べたんだよー』

「へぇー…」

羊のチーズ…。よく知らないんだけど、美味しいの?

何だか癖が強そう。

いかにもイタリアって感じするなぁ。
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