アンハッピー・ウエディング〜後編〜
名残惜しく、もう少し話していたい気分になるが。

「時間、大丈夫なのか?これからオペラなんだろ?」

『時間?…あ、本当だ。集合時間まで、もうちょっとだ』

おい。呑気に電話してる場合かよ。

さては、最初の間違い電話のせいで時間を無駄にしたな?

「早く行けよ。遅れないように」

『もっと悠理君とお喋りしてたかったのに、残念だなー』

言ってる場合かよ。良いから早く行け。

『時間があったら、また電話するね。じゃあね、悠理君。ばいばい。おやすみー』

「はいはい。おやすみ…」

そう言って、通話が切れた。

…間に合うと良いんだが。オペラ。

そういえば…今更だけど、国際電話なんて受けたの、これが初めてだったな。

電話代っていくらくらいかかるんだろう。ちょっと怖い気もするが。

それにしても。

不思議なもんだな。一時間目からひたすら走らされて、本気で死ぬかと思ったくらいなのに。

寝る前にこうして、ほんのちょっと寿々花さんと電話で話したってだけで。

「とんでもない厄日」から、「ちょっと良いことがあった日」になるんだから。

午前中の不幸を返して余りある…とまでは言わないが。

要するに、終わり良ければ全て良しってことだな。
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