アンハッピー・ウエディング〜後編〜
クラスメイトの心の中の溜め息が、俺の耳に聞こえてくるようだった。

折角新校舎に来て、超綺麗な最新鋭の視聴覚ルームを貸してもらって。

物見遊山で、楽しんでいても良いはずなのに。

全員、どんよりげんなりとした酷い気分だった。

しかし高飛車系芸術教師は、そんなことは全く意に介さず。

「それでは、再生を始めます」

映画のDVDをセットして、再生ボタンを押した。

…はぁ。仕方ない。

サボれば良かったのに、馬鹿正直に登校してしまった俺達が愚かだった。

正直者が馬鹿を見る時代ってことだな。

こうなったら諦めて、映画を観るしかない。

昨日のマラソンと違って、疲れ果てて死にそうになる…ってことはないだろう。多分。

逃げ場をなくし、諦めた俺達は、大人しく画面を見つめた。

…そういや、映画を観るなんて久し振りだな。

ホラー映画なら、何度となく寿々花さんに付き合って観させられたけど…。

さすがに今回は、ホラー映画ではないだろうし。

どんな映画を観ます、とまでは教えてくれなかったから…本編が始まるまでは、どんな内容なのか分からないな。

芸術的な心が何たらかんたら、とか言ってたし。

お洒落な外国映画、とか?

いずれにしても、後で感想文を書きやすいように、メモを取りながら鑑賞しよう。
 
しかし、メモ取りながら鑑賞って、全然観た気がしないよなぁ。

感想文のことなんか考えず、映画に集中させてくれれば良いのに…。

…と、皆思っていたに違いない。
< 281 / 645 >

この作品をシェア

pagetop